国民医療費の増加が続いている。政府は膨張する医療費の削減に取り組んでいるが、まずは医療費の無駄遣いを無くすことが重要だ。そのひとつが薬剤費の抑制である。例えば、特許期間が切れた後に販売される先発医薬品と同じ効能・効果をもつ後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及を促進することである。後発品は、開発費用が安く抑えられることから、先発品に比べて薬価が安い。後発品の割合は欧米では約半分だが、日本では2割に満たず、普及の余地は残っている。
▼しかし、現在は、後発品を本格的に普及させるための仕組みが不十分だ。医師は患者が実際に使用している薬の名前を把握するべきだと思われるが、現場では薬局で患者が購入した薬の情報を医師に自動的にフィードバックする仕組みになっていない。
▼医師は診断のときに先発品の名前で説明することが多い。私の経験でも、ひとしきり説明をしてもらった後に、私が「先生の言う薬は飲んでいないと思う」と伝えると、先発品と後発品の違いだということがわかった。値段が安いのだから、不便を患者側が我慢しないといけないのか。
▼こんな問題も、薬局と診療所がオンラインでつながれば、簡単に解決できるはずだ。薬局での情報を医師に送ることは、それほど難しい技術ではないはずだ。本気で医療費抑制に取り組むのであれば、患者目線で考えることが必要だ。
▼医療に限らず、政策が最大限の効果を発揮するには、関連する政策を把握し、反対の方向に誘導しないことが重要だ。複数の政策を同時に実施することで、相乗効果が生まれることも多い。政策には、部分の最適だけではなく、全体としての整合性も求められている。
(神田玲子・総合研究開発機構研究調査部長)
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