政府は11月16日、「働き方改革実現会議」の第3回会合を首相官邸で開催した。会合では、労働者の人材育成の充実、雇用吸収力・生産性の高い産業への転職・再就職支援、春季労使交渉に向けた賃金引き上げなどについて議論した。
日本商工会議所の三村明夫会頭は人材育成について、「中小企業では、現場で一から育て上げるOJTに限界があり、労働者本人によるキャリア形成が中心」と指摘。第四次産業革命に対応できる高度なITスキルや各産業が求める専門分野に特化した公的職業訓練の充実を求めた。
転職・再就職支援については、各地商工会議所が協力して実施している「ジョブ・カード制度」が2008年度の制度開始以来、職業訓練終了者の8割、約5万人を正規雇用につなげている実績を紹介。今後の課題として、大企業から中小企業への転職を挙げ、産業雇用安定センターをはじめとするマッチング機関のさらなる機能強化を求めた。
賃金引き上げについては、日商の調査において、3年連続で約6割の企業が賃上げを実施している一方、賃上げの理由として、多くの企業が人材を引き留めるための「防衛的な賃上げ」を挙げ、「業績改善」は3割を下回っている点を強調。「中小企業にとっては実力以上の引き上げ」と述べた。
また、「収益を上げ、賃上げできる環境にある企業は積極的に行うべき」と改めて日商のスタンスを強調。「賃上げには付加価値や労働生産性の安定的な向上が必要」と述べ、好事例の共有化を求めるとともに、賃上げに伴う社会保険料の増加について懸念を示した。
安倍晋三首相は、経済の好循環の継続の鍵として賃上げの必要性を強調。「少なくとも今年並みの水準の賃上げを期待している」と述べ、「4年連続のベースアップ実施」、来春に原油価格の上昇などによる消費者物価の上昇が期待されることから、「期待物価上昇率も勘案した賃上げ」を要請した。また、「中小企業の賃上げの環境を整備するため、下請けなど中小企業の取引条件の改善にしっかり取り組んでほしい」と述べた。
人材育成については、労働者個人を支援する教育訓練給付制度について、対象講座や給付額などを拡充する考えを表明。中高年の転職・再就職については、「受け入れ企業に対する支援や就職支援体制の強化など、総合的に環境整備を検討したい」と語った。
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