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北陸新幹線開業直前特集 新たな伝統を創造する歴史都市 高岡市(富山県)

雨晴海岸「有磯海(女岩)」 国指定名勝、おくのほそ道の風景地 万葉の歌人・大伴家持の歌に「渋谿(しぶたに)」と詠まれた海岸は、3000m級の立山連峰を海越しに眺めることができる景勝の地だ

北陸新幹線の開業を控え、注目を集める沿線地域の中で、最大の見どころは、どこか。テレビのバラエティー番組が取り上げるような軽めの情報が氾濫しているが、石垣編集部では、飛騨、能登へのゲートウェイであり、新たな伝統を創造し続ける歴史都市・高岡を推す。特集では、城下町からものづくり都市、そして観光都市へと生まれ変わる高岡の魅力を紹介する。

ドラえもんの作者、藤子・F・不二雄氏は高岡出身。ドラえもん生誕100年前(2012年)を記念して、高岡―射水を結ぶ万葉線で運行されているドラえもんトラム

時を超えて人を魅了するまち

加賀藩120万石の商都は高岡だ。2代藩主・前田利長が開いたまちは、高岡城を中心とする城下町としての基盤が整備されたが、江戸幕府の一国一城令により、高岡城は廃城。その後、3代藩主・利常の商工業振興策が功を奏し、長く経済の中心地として栄えることになる。利長公が呼び寄せた腕利きの鋳物職人が礎となって発展した金属産業は、歴代の職人たちによって磨かれ、400年以上たった現代に脈々と継承されている。

また、旧北陸道沿いを中心に整備された米や綿の集積地を抱え、北に富山湾の良港「伏木港」を擁し、北前船による交易も活発な交通の要衝、物流の拠点である高岡は、商都としての地位を確立していく。

国宝「瑞龍寺」をはじめとする、多くの神社仏閣などの貴重な文化財とともに、商工業都市として遺産群が市内全域に広がる。商人のまちであり、職人のまちでもある高岡には国の重要伝統的建造物群保存地区に中心市街地の2カ所(山町筋、金屋町)が指定されている。

山町筋(やまちょうすじ)は商人町で優れた土蔵造りのまち並み。金屋町(かなやまち)には千本格子の美しい家並みが続き、銅片を埋め込んだ石畳とマッチした佇まいは、高岡の宝となっている。

さらに遡(さかのぼ)れば、奈良時代に現高岡市伏木に越中国の国府が置かれており、この国府に、『万葉集』の代表的歌人である大伴家持が5年間、国守として在任していた。万葉集全4516首のうち、家持の歌は473首。このうち、実に220余の歌が越中の地で詠まれている。「万葉のふるさとづくり」を進める高岡市では、毎年10月の第1週に、連続3昼夜にわたって、「高岡万葉まつり」を開催。市内には、大小90基の「越中万葉」歌碑と散策コースも整備され、訪れる万葉ファンを喜ばせている。

ものづくりのDNAを体感せよ

高岡のまちなかを歩くとすぐに目に留まるのが、質・量ともに圧倒的な銅像やオブジェの数々である。普通の店先に、民家の前に、歩道に、公園にモニュメントが何気なく、ごく当たり前のように設置されている。

日本三大仏の一つである銅製の高岡大仏は、大火で焼失した大仏を市民の力と伝統の職人技を結集して30年かけて完成させたもので、「ものづくりのまち」のシンボル的な存在。高岡を訪れた歌人・与謝野晶子が「鎌倉の大仏より美男」と評したというイケメン大仏は、まちの中心部の路地の間からひょっこりと顔をのぞかせる。

それもそのはず、日本全国の銅像は、ほとんど高岡でつくられており、そのほか、寺の梵鐘(ぼんしょう)や仏具などのシェアも90%を超える。鳥取・境港のゲゲゲの鬼太郎も、東京・桜新町のサザエさんも、西本願寺や三十三間堂、成田山新勝寺の鐘も高岡製だ。鋳造や彫金、着色などそれぞれの第一級の職人が多数活躍する高岡には、今なお、全国から注文が相次いでいる。

毎年5月1日に行われる「高岡御車山(みくるまやま)祭」にも、伝統の技が息づく。京都の祇園祭、岐阜の高山祭など全国に5つしかない国の重要有形・無形民俗文化財の指定を受ける祭りの山車には、高岡銅器、高岡漆器の誇る最高の技術が凝縮。多くの観光客を魅了している。

新たな御車山の製作へのチャレンジも始まっている。高岡商工会議所が音頭を取り、今年4月にオープンする高岡御車山会館で、現在の高岡の技術の粋を集めた「平成の御車山」を展示しようと、現代の名工たちが立ち上がった。完成したパーツを順次展示していき、平成29年までに、最終的な形にしていく試みだ。

飛越能の玄関口をアピール

北陸新幹線の新駅「新高岡駅」は、飛騨、越中、能登の3地域の玄関口としての期待が高まっている。同地域の人口は約80万人。「飛騨の白川郷や高山、能登の七尾や和倉温泉、輪島や珠洲などに足を延ばす観光客にとって、最も便利なのは高岡であるということを、ぜひ知ってほしい」と高岡商工会議所の荻原隆夫専務理事は力を込める。

同所では、飛越能地域との広域連携、開業プロモーション事業、産業観光などの観光振興事業の推進、首都圏や沿線地域との都市連携など積極的に事業を展開している。北陸自動車道の高岡砺波スマートIC、能越自動車道の高岡ICは新高岡駅まで車で10分。高速ネットワークの充実により、飛越能地域の距離はさらに縮まっている。

高岡の食のブランド化も目玉事業の一つ。同所が中心となって開発した富山県民のソウルフード「昆布」を使った「高岡昆布飯」「高岡昆布スイーツ」は早くも人気を呼んでおり、土産品としても浸透を目指している。

同所の「高岡産業文化振興基金」を活用した奨励事業も、市内の観光事業を強く後押ししている。高岡市内の観光サービス店舗の出店や、産業観光受け入れ事業に奨励金を支給し、機運を盛り上げてきた。

選ばれる観光地へ

高岡で国内はもとより海外から注目されているのが、「ドラえもん」だ。ドラえもんの作者で有名な藤子・F・不二雄氏は高岡出身。市内を走る路面電車の万葉線には、「ドラえもんトラム」が走り、JR高岡駅の駅ビルには、銅製の「ドラえもんポスト」が設置されるなど、市内各所でドラえもんとその仲間たちに会えるスポットがある。

世界中にファンがいるドラえもん効果は抜群。国内だけでなく海外からもファンが訪れるなど話題を呼んでいる。同所では、市と連携して「ドラえもんに会えるまち高岡」を、広くアピール。新たな魅力を発信していく。

来訪者に心地よく滞在してもらうための「市民のおもてなし力向上」にも力を注ぐ高岡。「選ばれる観光地」となるために、間近に迫った北陸新幹線の開業とともに、そのあふれる魅力を多くの人に体感してもらうことで、その第一歩を踏み出す。