中小企業庁はこのほど、「平成27年中小企業の雇用状況に関する調査集計結果」を取りまとめ、公表した。27年度にベースアップや賞与・一時金の増額など何らかの賃上げ(常用労働者1人当たり平均賃金の引き上げ)を行った(予定含む)企業の割合は67・6%と、平成26年度の64・3%に対し、3・3ポイント増加した。調査は6月に実施し、回答企業数は7352社。
好調な業績が引き上げ後押し
賃金を「引き上げる/引き上げた」と回答した主な理由は、「人材の採用・従業員の引き留めの必要性」が47・4%で最も多くなっており、中小企業の人手不足感が影響している結果となった。次いで「業績回復・向上」が38・1%と多くなっており、賃上げを実施した企業では、業績の好調さが賃上げの追い風となっている。
賃金を「引き上げない/引き上げていない」と回答した主な理由は、「業績回復・向上が不十分」が79・5%で最も多くなっており、賃上げを実施していない企業では、業績が低迷していることが賃上げを妨げていることが明確となった。その後に「賃金より従業員の雇用維持を優先」(26・0%)、「社会保険料負担額の重さ」(24・4%)、「原油・原材料価格の高騰」(22・3%)が続いている。
また、賃金を引き上げた企業のうち、引き上げ方法として月給の引き上げを行った企業は93・4%(うちベースアップは26・9%)。賞与・一時金の増額を行った企業は42・7%だった。
規模に応じて対応に差
月給の引き上げ(定期昇給、ベースアップなどを含む)について、全回答企業に占める「実施する/実施した」とする企業の割合は、従業員規模別に見ると、従業員数が20人以下の企業は、36・7%、従業員数が100人超の企業は、82・8%となっており、従業員規模が大きくなるほど、月給の引き上げを実施した企業の割合が大きくなっている。ベースアップについて、全回答企業に占める「実施する/実施した」とする企業の割合は、従業員数が20人以下の企業は、8.4%。従業員数が100人超の企業は、27・5%となっている。
また、賞与・一時金の増額について、全回答企業に占める「実施する/実施した」とする企業の割合は、従業員数が20人以下の企業は、17・3%。従業員数21~100人の企業は32・3%、100人超の企業は36・5%となっている。
人員計画も改善の傾向
「人員を増やした/増やす予定」と回答した割合は、26年度は45・0%、27年度は51・5%と6・5ポイント上昇。その方法としては、いずれの年度においても「常用労働者を中途採用で増やした」が最も多く(約7割)、次いで、「常用労働者を新卒採用で増やした」(約5割)となっている。中小企業の多くでは、中途採用のウエイトが高い結果となった。
常用労働者と非正規社員のキャリアアップ、意欲や能力を引き出す主な取り組みなどについて、26年度以降に導入・拡充したもの(予定を含む)としては、常用労働者については「意欲や能力を引き出す取り組み(資格取得、技能検定の受験料補助など)」(62・5%)が最も多い。また、非正規社員については「報酬面での改善」が50・4%と最も多くなっており、非正規社員における賃上げも一定程度行われている状況が見て取れる。
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