「義父と義母から贈られたけれど、気に入らないからキャンセルしたい」
こんな電話をかけてきたのは、小さなお子さんを持つ母親だったという。同じような電話を何本か受け、その人は自らが身を置く業界に「著しい危機感を覚えた」と当時を振り返る。
その人とは、節句人形製造販売を営む「ふらここ」の原英洋さん。100年以上続く人形師の家柄の三代目として、家業の人形店で働いているときのことだった。
古くして古きは滅ぶ
桃の節句と端午の節句は子の成長を願い、家族の絆を深める機会として古くから親しまれる日本の伝統的な季節行事である。しかし、その市場は衰退を続け、典型的な構造的不況業種になっている。団塊の世代のころには270万人あった出生数が、いまや3分の1以下の約86万人。少子化による絶対数の減少ばかりでなく、節句人形を購入するのは、その3分の1にまで減っていると原田さんは言う。
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