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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 卓球のイメージアップに貢献 水谷の功績光る

リオデジャネイロ五輪男子団体決勝で第1セットを取り吠(ほ)える水谷隼選手 写真提供:産経新聞

今回も数々のドラマを生んだリオデジャネイロ五輪。取り上げたい選手や振り返りたい場面はたくさんあるが、個人の成績もさることながら、競技そのものを大きく躍進させたのは男女の卓球だろう。

シングルスでは、男子の水谷隼が日本男子として初めて銅メダルを獲得。また、団体戦では女子が銅メダル、男子が銀メダルに輝いた。宿敵中国には今回もかなわなかったが、個人と団体でのメダル獲得は、日本の卓球界の存在を世界に大きくアピールした。

女子の福原愛、石川佳純、伊藤美誠、男子の水谷隼、丹羽孝希、吉村真晴と誰もが欠くことのできないメンバーだったが、なかでもその活躍が際立っていたのは水谷だろう。

五輪前から個人、団体でのメダル獲得を目標に掲げ、見事にそれをやってのけた。個人で銅メダルを獲(と)った際には、床に寝っ転がり派手なガッツポーズを繰り出してその喜びを爆発させた。あまりの喜びように「相手の心情も考えろ」と喝を入れる人もいたが、「僕は命を懸けてここに来ていますから。遊びじゃないし、戦場ですから」と反論した。

確かに水谷のここまでの歩みは戦いの連続だった。史上最年少17歳7カ月で全日本選手権のチャンピオンになってもまったく満足しなかった。高校時代からヨーロッパのプロリーグを転戦し、世界の頂点を見据えながら戦ってきた。その自信とプライドが、時として強気の発言を生んだ。今年1月の全日本選手権、男子シングルスで3連覇、8度目の優勝を飾ったときにも、「(若手の)丹羽や吉村と一緒にされては困ります」と存在の重さを自ら主張した。

水谷が強気の発言に終始し、大きなガッツポーズを見せるのには、強い選手を目指すことと同時に、もう一つ理由があった。それは、卓球というスポーツをもっと知ってもらうということと、女子に先行されている人気を男子も得ることだった。今回も男子が勝たなければ、人気も話題も「愛ちゃん、佳純ちゃん、美誠ちゃん」に独占されてしまう。同じ日本チームでも、水谷には女子に対するライバル心と男子の現状への危機感があったのだ。

ひと昔前の「卓球」は、地味なイメージだった。しかし、今は誰もそうは思わない。テーブルを挟んだ俊敏な格闘技。それこそが、水谷のつくってきたイメージだった。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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