日商 Assist Biz

更新

スポーツライター 青島健太の注目アスリート 25年ぶりのカープ優勝に貢献した男・「神ってる」鈴木

9月10日の巨人戦で2ランホームランを放つ鈴木誠也選手 写真提供:産経新聞

緒方孝市監督が宙を舞う。

7回の胴上げに選手、ファン、関係者の思いが詰まっていた。プロ野球、広島東洋カープが25年ぶり7度目の優勝を果たした。

黒田博樹と新井貴浩が泣きながら抱き合うシーンにもグッとくるものがあった。この優勝は、間違いなく二人が引き寄せたものだった。メジャーリーグから戻ってきた黒田は広島の誇りであり、阪神から古巣に復帰した新井はチーム結束の中心だった。投打に柱となるベテランが存在することで、今シーズンのカープは一丸となって戦い抜いた。それは、誰もが認める貢献だった。

しかし、野球はこの二人だけではできない。とりわけ優勝を勝ち取るには、チームに勢いをつける若手の活躍が不可欠だ。そこに素晴らしい逸材が登場したことも、カープ優勝の大きな原動力だった。緒方監督をして「神ってる」と言わしめた4年目の鈴木誠也だ。

鈴木の活躍は、まさに神がかっていた。例えば、交流戦最後となったオリックスとの3連戦。鈴木は3戦連発でホームランを放つ。1戦目は延長12回の末にサヨナラ2ラン。2戦目は9回裏の逆転サヨナラ3ランだった。3戦目もゲームを決めるホームラン。このほかにも鈴木はシーズンを通して奇跡的なプレーを連発した。

しかし、今シーズンの鈴木を語るのに「神ってる」のは成績を見れば一目瞭然だ。優勝を決めた9月10日の巨人戦でも2ホーマー。その試合終了時点で、打率3割3分6厘、88打点、26本塁打。それは押しも押されもしない強打者の成績だった。

鈴木が「神ってる」のには、理由がある。今シーズン、鈴木は打撃フォームを変えた。暇さえあれば人のフォームを見て研究した。良い打者のトップの位置は深く安定している。トップとは、打つためにバットを後ろに引いてくる位置のことだ。これが深く安定していれば、力強いスイングが可能になる。「神ってる」打撃は、トップをしっかりと意識することで生まれているのだ。

「ヒットやホームランは結果です。それはどうなるか分からないですが、過程は自分の力で変えられると思っています」

どんな準備をしてどんな心構えで試合に臨むのか。いつでも最善の準備と努力を怠らない若手が、チームを大きく躍進させたのだ。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

次の記事

松山英樹

どこに目標を置いて、何を目指すのか。そうした気持ちの姿勢が、プレーの質を大きく変える。日本オープンゴルフ選手権で初優勝(10月16日)を飾った松山英樹選手の考えを聞いて…

前の記事

水谷隼

今回も数々のドラマを生んだリオデジャネイロ五輪。取り上げたい選手や振り返りたい場面はたくさんあるが、個人の成績もさることながら、競技そのものを大きく躍進させたのは男…

関連記事

上野由岐子

2020年東京五輪を心待ちにしているアスリートは数多くいるが、その中でもこの人ほど熱い思いで、その時を待っている選手はいないだろう。ソフトボール日本代表の上野由岐子投手…

渡辺一平

東京辰巳国際水泳場で4月に行われた競泳日本選手権。韓国で開催される世界選手権(7月)の代表選考を兼ねた大会だけに、有力選手の泳ぎに注目が集まった。バタフライと個人メド…

吉田正尚

強烈なアピールだった。2020年東京五輪で金メダルを狙う野球日本代表の4番候補にオリックス・バファローズの吉田正尚(まさたか)選手(外野手)が名乗りをあげた。3月9、10日と…