Q 私は、スーパーマーケットチェーンで本社人事部の課長を務めています。今年1月から給与の源泉徴収事務でマイナンバーの使用が始まりました。わが社も対応をしなければなりません。特に税制について、どのような点に気を付ける必要がありますか?
A 社会保障・税制度の効率性・透明性を高めるため、マイナンバー制度の利用が今年1月1日から順次開始されました。税務の申告書や法定調書をはじめとする書類を税務署などに提出する場合には、これらに個人番号や法人番号を記載する必要があります。なお、法人の税務手続で最初にマイナンバーを利用するのは、給与等の所得税源泉徴収事務になります。
最初の税務手続は「所得税源泉徴収事務」
住民登録のある日本国の住民全員(外国籍の人で、住民票がある中長期在留者や特別永住者を含む)にマイナンバー、12桁の個人番号が通知されました。また、企業には、国税庁から13桁の法人番号(支店や個人事業者は除く)が通知されています。今年1月から、これらの利用が始まりました。法人の場合、「給与等の所得税源泉徴収事務」が、マイナンバーを利用する最初の税務手続です。
源泉徴収では、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に従業員のマイナンバーを記載します。なお、申告書には、本人・配偶者・扶養親族のマイナンバーも必要です。また、マイナンバー提示時には、本人確認が必要ですので、忘れないようにしましょう。
人事担当者の悩みの種は、パート社員など、非正規社員のマイナンバーも必要となる点でしょう。ご質問のようなスーパーやファミレスといった従業員の人数が多い企業では、特に人事担当者の責任は重大になります。というのも、マイナンバーと、それに紐づく個人情報は、特定個人情報として従来の個人情報以上に厳格な管理が義務化されているからです。ナンバーの入力、保管から削除まで、情報漏えいの防止に、細心の注意が必要となります。なお、給与の源泉所得税の徴収事務では、給与、配当金、賃借料などの支払対象者の本人確認手続をします。確認手続は記録を残しておくといいでしょう。
実務で注意すべき点
まだ始まったばかりの制度なので、不安点、不明点もたくさんあることでしょう。以下に注意すべき点をご紹介します。
①個人が税務関係書類を税務署へ提出するとき
本人確認のため、個人番号カードなどの本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(郵送による場合は、個人番号カードなどの写しを添付します)
②個人番号の提供を受けられない場合
安易に個人番号を記載しない書類を税務署に提出するのではなく、個人番号の記載は、法律(税法など)で定められた義務であることを伝え、提供を求めましょう。それでもなお、提供を受けられない場合には、個人番号の提供を求めた経緯を記録、保存し、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください
③国税分野において、何らかの理由で、自分の番号確認書類を事業主に提示できない場合
事業主は、従業員から「自身の個人番号に相違ない旨の申立書」の提出を受け、個人番号の確認を行うことができます。なお、この「申立書」には、提出者の個人番号、氏名、住所、生年月日などの個人識別事項の記載が必要です。さらに、本人が署名押印し、その本人が確かに作成したものと分かることが必要です
④平成27年10月2日の所得税法施行規則などの改正
この改正により、今年1月以降も会社から給与の支払いを受ける従業員に交付する給与所得や退職所得の源泉徴収票へ個人番号(本人および扶養親族)は記載されないことになりました。改正前と扱いが変わっていますので注意が必要です
(公認会計士 米谷 齊)
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