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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 今あるものを有効活用 佐野のクリケットに学ぶ

佐野市の国際クリケット場で行われた「東アジアカップ」 写真提供:日本クリケット協会

2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技会場建設を巡ってさまざまな議論が巻き起こった。膨らむ建設費を抑えるために、仮設の競技場や既存の競技施設を活用する案などいろいろな意見が検討されたが、経費の削減を果たしつつ新しい競技場をつくる方向でやっとその方針が定まってきた。各競技団体にとっては、新設の競技施設が選手・関係者のモチベーションを高め、これからの普及・振興の核となるはずだ。後利用を含め、それがしっかりとしたレガシー(遺産)になることを期待したい。

新しいものができることは何であれ楽しい。2020年に向かってそうした機運はますます高まっていくはずだ。ただ何でも新しいものが最善かといえばそうではない。今ある施設や使われなくなった環境を再利用する知恵も大いに必要だ。その意味で私が注目しているのは、栃木県佐野市におけるクリケットによる「まちおこし」だ。

本誌11月号で佐野商工会議所・島田嘉内前会頭が詳述しているように、佐野市では行政や教育委員会、商工会議所、競技団体などが連携して「クリケットのまち・佐野」にするべくさまざまな活動が展開されている。競技の内容や佐野市の歴史などは11月号に譲るが、こうした活動の肝になっているのが、実は廃校になった高校グラウンドの再利用だ。残念なことに当地の田沼高校が廃校となり校舎とグラウンドがそのまま残っていた。次なる利用法はないものか。そこで手を挙げたのが日本クリケット協会だった。廃校のグラウンドを国際規格のクリケット場としてよみがえらせる。現在、各所からの助成を取り付けて、年々その環境を充実させている。その甲斐(かい)あって、昨年の秋には「東アジアカップ」という国際大会も開催された。

大会には中国、香港、韓国から選手たちが訪れ、佐野市のインバウンドにも貢献している。「まちの国際化」によって地域の青少年に与える影響にも良いものがあるだろう。佐野市では各世代のクリケットクラブが数多く誕生している。廃校がクリケットの拠点になることで、相乗的な効果も生まれている。クリケットを活用した動きは、東京都昭島市や千葉県山武市でも始まっている。

つくるだけじゃない。今あるものをどう利用するか。スポーツにも地域にも、そんな知恵が問われている。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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