Q 弊社は、精密金型のメーカーです。手前味噌ですが、弊社の金型はノウハウの塊といっても過言ではなく、それらのノウハウは、秘密情報として管理しています。平成28年1月から不正競争防止法が改正されたそうですが、改正の概要と対応のポイントを教えて下さい。
A 営業秘密侵害の抑止力向上のため、営業秘密情報の転売利用の処罰対象範囲拡大、処罰の引き上げ、賠償請求の容易化、侵害品の譲渡・輸出入の禁止及び除斥期間の延長などの改正がありました。いずれも営業秘密情報保持者にとって有利になりましたので、それぞれの中身を熟知し、適切な保護が受けられるようにすることが重要です。心配がある場合は、弁理士などの専門家に相談されることをお勧めします。
営業秘密の3次取得者以降も処罰対象に
故意に営業秘密を転得し、使用または開示を行う行為が、左図のように3次取得者以降であっても実行行為者及び法人処罰の対象になりました。すなわち、正当に開示された秘密情報を、利害目的で使用するために悪意もしくは重過失により取得、もしくは使用、または第三者に開示した場合、営業秘密侵害行為に該当する場合があります。例えば、A社が同業のB社の元従業員を新たに雇用した場合において、元従業員がB社の営業秘密を用いて製造した物を販売すると、A社は営業秘密侵害により差止請求・損害賠償請求などを受ける恐れがあります。
改正による刑罰の強化
不正競争防止法は、営業秘密の不正取得、不正開示及び不正使用に関する犯罪において、下表のように、実行行為者に対する罰金を2000万円に、法人に対しては5億円に引き上げました。そのどちらも、当該犯罪行為により獲得した収益は没収されます。さらに、これらの犯罪は親告罪でしたが、裁判における秘密保持が担保可能になったことから非親告罪に変更され、被害者の告訴が無くても検察が訴追可能となりました。そのため、何らの前触れもなく家宅捜査を受ける恐れもあります。
企業の対策
これらの対策として、A社は故意または重過失でB社の営業秘密を取得、または使用、もしくは開示でないことを立証できるようにしておくことが必要です。具体的には、雇用契約時に元従業員がB社との間に秘密保持義務を負っていないか確認し、負っている場合は、その分野に関連する業務には配置しないことが好ましいです。秘密保持義務を負っていない場合でも、雇用契約においてB社の秘密情報を使用しないことや、同業者への転職禁止期間に該当しないことの確認規定を盛り込んでおくことが好ましいです。さらに、自社の秘密情報を保護するため、自社の秘密情報が何であるか特定するとともに、当該情報に秘密情報である旨を表示し、及び、退職者との間では同業者への転職禁止期間を定め、さらに、該当する営業秘密を特定して開示してはならない旨の契約を締結することをお勧めします。 (弁理士・本谷孝夫)
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