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こんなときどうする会社の法律Q&A 【今月のテーマ】自然災害などによる従業員の解雇について

Q 唯一の自社工場が台風により全壊し、建物内の生産設備も使い物になりません。これから、建物や生産設備を整える資金も気力もありません。現在、従業員にはとりあえず休業してもらっていますが、全員を解雇しなければなりません。解雇は認められるでしょうか。

A 台風などで工場と生産設備が全損し、事業が行えない場合は、解雇について客観的に合理的な理由があり、社会通念上もやむを得ないと認められるので、解雇は認められるでしょう。ただ、従業員に対する十分な説明と再就職につき会社としてできる限りの努力はすべきです。

労働契約法による解雇権行使の制限

解雇は、労働者の仕事と賃金を失わせてしまうものであり、労働者の生活に極めて大きな影響を与えます。

解雇権の行使については、労働契約法16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」旨が定められています。

どのような事実があれば、客観的に合理的な理由を欠くのか、また社会通念上相当でないことになるのかは、それぞれの状況に応じた解釈に委ねられています。

事業所閉鎖に伴う解雇

事業所閉鎖に伴う解雇については、裁判例において、

①使用者が事業を廃止することが、合理的でやむを得ないといえるか

②労働者に対して解雇の必要性、合理性について納得を得るための努力を果たしたか

③解雇に当たって労働者に再就職などの準備を行うだけの時間的余裕を与えたか

④予想される労働者の収入減に対し経済的な手当てを行うなどその生活維持に対して配慮する措置をとったか

⑤他社への就職を希望する労働者に対してその就職活動を援助する措置をとったか

さまざまな観点から、解雇が妥当であったかどうかを判断します。

自然災害で工場が全損したため全従業員を解雇

台風や震災などの自然災害によって工場が全損したため全従業員を解雇する場合については、事業所閉鎖に伴う解雇の一類型と考えられるので、次のような要素が考慮されると思われます。

①工場の再建の可能性はないか

②労働者の再就職などについて努力したか

③工場の再建の可能性について、労働者に十分な説明をしたか

災害で工場と生産設備が全損し、事業が行えない場合は、解雇には客観的に合理的な理由があり、社会通念上もやむを得ないと認められるので解雇は認められるでしょう。

ただし、従業員に対して十分に事情を説明するとともに、再就職については会社としてでき得る限りの努力をし、誠意を表すことが大切です。

解雇予告と丁寧な事情説明

従業員を解雇する場合には、通常、少なくとも30日前にその旨を予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条1項本文)。ただし、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には、予告や解雇予告手当の支払いは不要です(労基法20条1項但書)。

台風や震災などによって、工場が倒壊し、生産設備も全損したような場合は、「天災事変のために事業継続が不可能となった場合」と考えてよいでしょう。その際、法律上は解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要ですが、解雇という厳しい措置をとるのですから、その事情説明は丁寧に行い、また、解雇の効力発生までは相当の時間の余裕をもって行うべきです。 (弁護士・山川 隆久)

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