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こんなときどうする会社の法律Q&A [今月のテーマ] 家賃・地代の値上げに賃借人や借地人が同意しない場合

Q 所有している建物を貸し出しているのですが、借り主が家賃の増額に応じてくれなくて困っています。この場合、賃料増額を求めるためには、どのような手続きを取ればいいでしょうか。

A 借り主と任意交渉しても家賃の増額に応じてくれない場合、次に法的手続きを取ることとなりますが、訴訟を起こす前に、まずは裁判所に調停を申し立てる必要があります。この調停の場で借り主との話し合いがまとまらない場合は、賃料増額を求める旨の訴訟を起こすこととなります。調停を経ずにいきなり訴訟を提起したとしても、裁判所によって調停手続きに付されることになります。

賃料増額請求

建物の家賃や土地の地代(以下、併せて「賃料」といいます)は、貸し主と借り主が、不動産賃貸借契約を締結する際に合意によって定めますが、公租公課や不動産価格の増減その他経済状況の変動により、当初定めた賃料が安価に過ぎる状態になることがあります。

この場合、賃料増額を希望する貸し主は、まずは、借り主に対して賃料増額請求の意思表示を行い、借り主との間で賃料増額について任意交渉を行うこととなります(借地借家法11条、32条)。

この任意交渉において借り主の合意が得られない場合には、裁判所での法的手続きを取ることが必要となります。

調停前置主義

この点、裁判所において賃料増額請求に関する法的手続きをする場合、裁判を提起するに先だって、まずは調停を申し立てることとされています(調停前置主義〔民事調停法24条の2第1項〕)。調停とは、裁判所において双方当事者が話し合いによって解決を模索する手続きであり、調停が成立すれば判決と同様の法的効力を持ちます。調停を経ずに訴訟を提起した場合、裁判所により調停に付されることとされています(同項但書)。

このような調停前置主義が取られている理由は、不動産に関する賃貸借関係は、一般的に長期的に存続するものであるため、判決によって裁判所の判断を当事者に強制するよりも、可能な限り当事者間の合意によって賃料増額の有無や相当な賃料を定めて紛争解決することが望ましいと考えられていることによります。

調停手続きにおいて、当事者間で賃料増額に関する話し合いがまとまらない場合、原則として調停は不成立(法律用語では、「不調」といいます)となり終了します。

訴訟について

調停での話し合いがまとまらずに不調で終了した場合、賃料増額を求める貸し主は、訴訟を提起することができます。訴訟では、賃料増額理由の有無(減額請求の場合は減額理由の有無)や、相当な賃料の金額を巡って貸し主と借り主が主張立証を尽くし、裁判所がこれらの点について判断を下すことになります。

裁判所は、相当な賃料の金額を判断するに当たっては、

①土地建物に対する租税その他の負担の増減

②土地建物の価格の上昇低下その他の経済事情の変動

③近傍同種の建物の賃料との比較

以上①〜③の要素のほか、「請求当時の経済事情ならびに従来の賃貸借関係、特に当該賃貸借の成立に関する経緯その他諸般の事情を斟酌して、具体的事実関係に即し、合理的に定めることが必要である」として、事案ごとに総合的な判断をしています(最判昭和44年9月25日参照)。

この点、裁判所の一般的な判断傾向としては、裁判所が選任した鑑定人が相当な賃料金額を鑑定した結果をまとめた不動産鑑定評価書の内容に依拠して判断することが多いようです。

なお、以上の手続きの流れについては、契約期間中であろうと、更新時であろうと違いはなく、これは土地の賃料・地代の場合も、また、賃料減額を求める場合も同様です。 (弁護士・苧坂 昌宏)

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