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身の丈ITで生き残れ! vol.1

1985年に二代目代表取締役に就任した髙丸正さんは、ロボット関連事業を本格稼働させた。工作機械がNC(コンピューターによる数値制御方式)に置き換わったように、製造の現場がロボットに置き換わる日も近いと感じている

人材が採用できない、従業員が高齢化し辞めていく―。一方で国は働き方改革を推進しており、新たな働き方改革関連法が順次適用され、現場の状況はこれまで以上に厳しくなる。相反する二つの課題を解決するための最善策は、ITやロボットの活用による生産性の向上だ。そこで「身の丈ITで生き残れ!」第1回は、ロボット・システムインテグレーター(SIer)の視点から、中小企業の現場へロボットを導入することで何が変わるのかを考えていく。

ロボットは中小企業が得意な少量多品種生産に向く

多くの経営者が抱く産業用ロボットのイメージは、大量生産現場における自動機であり、中小企業の現場への導入の目的は、従業員の置き換えにあると考えているのではないか。 しかし、中小企業のロボット導入を積極的に支援しているロボットSIer髙丸工業社長の髙丸正さんの答えは違う。 「ロボットは本来、少量多品種生産に対処できる装置です。また、大企業は省人化目的でロボットを導入していますが、元々人手が足りない中小企業では、生産性向上のために導入するのです」 ロボットはプログラミングされた命令に従って、人間のように作業を行う。別の作業をさせたいときは、プログラムを変更すればよく、少量多品種生産にも対応できる。 中小企業におけるロボットの導入は、従業員の置き換えが目的ではない。例えば溶接の現場に溶接ロボットを導入する場合、ベテランの溶接工がロボットを操作するのではない。溶接の技術を持たない新人がベテランの技術をプログラムに反映させながら、溶接ロボットを操作する。新人がベテランの域に達するには長い年月が必要になるが、ロボットのプログラミングなら短期間で習得できる。ベテラン溶接工は今まで通り腕を振るい、ロボットの仕事に対してもアドバイスをする。ロボットは次第に〝腕〟を上げ生産性が高まる。当たり前だが、24時間稼働させても36協定の罰則付き上限規制に抵触することはない。 「しかもプログラムは会社の資産として残るので、ベテランが退職してもその技術をロボットに引き継ぐことができます」と、髙丸さんはロボット導入による技術の継承と人手不足対策の効果をも強調する。 ただ、ロボットは万能ではない。上図にあるように、人手による作業、専用機による作業、ロボットによる作業を比較すると得意な分野、不得意な分野が見えてくる。人は複雑な作業をこなし、作業変更にも柔軟に対応できるが、パワーやスピードで劣る。繰り返し作業も苦手だ。専用機は特定の作業であればパワー、スピード、精度を追求できるが、作業変更は難しい。ロボットは両者の中間だ。専用機よりもパワー、スピード、精度で劣る面もあるものの作業変更には対応できる。価格も専用機よりも安く、耐久性・信頼性は高い。

メーカーと中小企業は言語が異なり通訳が必要

髙丸さんがロボットSIerとして中小企業向け案件(売り上げの7割を占める)に力を入れているのは、ロボットメーカーや導入支援団体、大手SIerが〝中小企業の言語〟を理解できていないと感じているからだ。中小企業向けの案件の場合、ロボット導入までの標準的な期間は、導入の検討期間を含めて約6〜8カ月かかる。その間、緻密なコミュニケーションが求められるが、「中小企業のものづくりは経験則によるところが多く数字化できていません。そのため、作業の数字化を進めようとするロボットメーカーとはコミュニケーションが成り立ちにくい」(髙丸さん)。 そこで髙丸さんは両者の〝通訳〟の役割を果たそうとしている。また、ロボット導入は中小企業のグローバル競争力強化につながる。「欧米企業(従業員がロボットと同じ現場で働くことを嫌がる)もアジア諸国の企業もロボット化が進んでいないからこそ、中小製造業にロボットを導入すれば競争力が高まります」。労働力不足に対応するための施策は、外国人労働者の受け入れではなく、ロボット活用の推進であり、それが「わが国の国力増強の手段である」と信じているからだ。

会社データ

社名:髙丸工業株式会社(たかまるこうぎょう)

所在地:兵庫県西宮市朝凪町1-50 JFE西宮工場内

電話:0798-38-9200

代表者:代表取締役 髙丸 正

従業員:29人

HP:https://www.takamaru.com

※月刊石垣2019年5月号に掲載された記事です。

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