政府は9日、新たな成長戦略である「未来投資戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。未来投資戦略では、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)などによるイノベーション「第4次産業革命」を産業や生活に取り入れることで、さまざまな社会問題を解決する「Society5・0」の実現を目指すとしており、その実現に向けた各種施策が盛り込まれている。日本商工会議所の三村明夫会頭は同日発表したコメントで、「わが国の新たな国家ビジョンである〝Society5・0〟の実現を目指す戦略や計画が出揃った。あとは実行あるのみ」と期待を寄せた。
未来投資戦略では、「健康寿命の延伸」「移動革命の実現」「サプライチェーンの次世代化」「快適なインフラ・まちづくり」「フィンテック(ITを活用した新たな金融サービス)」の5つを「Society5・0」の実現に向けた戦略分野として掲げている。具体的には、AI開発・実用化の推進、介護ロボットなどの導入促進、無人自動走行による移動サービスや小型無人機(ドローン)による荷物配送の実現、「i―Construction(ITを活用した土木建設)」の対象拡大、新たな決済サービスの導入などが盛り込まれている。
一方、地域経済に好循環を生み出すためには、中小企業の生産性向上が必要と指摘。IoTやロボットの導入、人材・ノウハウ提供などの経営支援に取り組むとしている。地域産業において重要な地位を占める農林水産業については、攻めの姿勢に転換すべく、多様なデータに基づいた運営や輸出強化に向け海外市場を開拓していく方針を示した。また、2020年の訪日外国人旅行者数4000万人の実現に向け、文化財など新たな観光資源の活用や訪日プロモーションの強化にも取り組む。
骨太の方針では、「基礎的財政収支(PB)を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」としている。三村会頭は、「2020年度のPB黒字化目標を堅持したことを支持する」とコメント。一方、「足元で0%台後半の潜在成長率では、財政健全化の前提となる名目3%の経済成長の実現は決して容易でなく、大幅な税収増は期待できない。現実を直視し、2018年度の中間評価を待たずに見直しを図るべき」と懸念を示した。
最新号を紙面で読める!