本連載では、最近世間をにぎわせている話題の中から、企業経営のヒントになる事柄について、株式会社セレブレイン代表取締役社長の高城幸司氏に解説いただく。
最近はAI(人工知能)の活用に取り組む企業のニュースを頻繁に見掛けるようになりました。例えば、話し掛けるだけで操作できるAIスピーカーの登場。あるいはAI事業に大型投資を決断した経営者のコメントや、コールセンターでオペレーターの手助けとなる情報表示を行うAIサービスなど。学術的なものに限らず、ビジネスで企業経営に影響を与える存在になってきました。筆者もAI関連のビジネスを立ち上げた経営者から相談を受ける機会が増えました。ただ、自分には関係ない、まだ遠い先の話と考えている人もいます。そこでAIを身近に感じていただく活用のヒントを紹介したいと思います。
まず、AI(Artificial Intelligence)に似た言葉でBI(Business Intelligence)があります。この二つの違いを理解しましょう。この二つに共通するのはデータを活用すること。BIはデータを分かりやすくグラフや表に整理して特徴を見つけ出しやすい状況をつくる手法。対して、AIは特徴を見つけ出して推論・仮説まで行う手法のこと。BIは分析ツール、AIは予測ツールとして活用するものと理解してください。
さて、そんな予測ツールとしてAIの普及が加速的に広がりそうな分野の一つがHRと呼ばれる人材マネジメントの世界です。皆さまの会社でも社員ごとの履歴=データが保管されていると思います。そのデータをAIで有益な予測に仕上げるのです。例えば、出勤時間や日報の記入内容に入社時の適性テストや人事評価を組み合わせて特徴を導き出し、退職や好業績をあげる社員を予測しようとする取り組みが始まりつつあります。現在は働き方改革や人手不足に対する対策として大企業が中心に動いていますが、離職率が高い、採用に苦労している業界では関心が高く、広がっていくのは間違いないでしょう。
こうして、社内で保管されたデータを活用して特徴を見つけ出して有益な予測ができそうな分野はHR以外にもたくさんあります。例えば、営業部門や購買部門、マーケティングの分野など。売り上げ予測や発注予測、プロモーション手法の予測などを効果的にでき、あるいは人には見いだせない成果につなげる仕事をAIは担ってくれるのです。
ただし、前提としてデータが保管されていなければAIは活用できません。HRの分野でも人事評価や適性テストのデータが破棄されていれば予測したくても精度が下がるか、不可能になることでしょう。ですからAIの時代に便乗して活用するには、社内で行われた業務・活動などのデータ化を進めましょう。例えば、上司と部下が行った目標設定とその結果や適性テストなど破棄せずにデータとして保管しておく。日々の会議でも議事録を紙ではなく、データとして保存しておく。こうした地道な取り組みでAI活用の素地から始めてみてはどうでしょうか?
(株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司)
最新号を紙面で読める!