コラム石垣 2017年6月21日号 神田玲子

米国の大統領は、何を代表しているのか。それは、米国民の一部の人々ではないはずだ。トランプ大統領は、地球温暖化に対する国際的取り組みであるパリ協定からの離脱表明で、自分はパリの代表ではなく、ピッツバーグ市を代表すると発言した。これが、ピッツバーグ市長の不評を買い、市長はオバマ政権が約束した目標を維持する姿勢を明らかにした。ピッツバーグ市が炭鉱の町からバイオや金融の都市に転換した苦労の歴史はよく知られており、その功績が認められてサミットがピッツバーグで開催されたほどだ。

▼同様な動きは全米各地に広がっている。トランプ大統領の離脱表明からわずか4日の間に、ピッツバーグ市以外にも、ワシントン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州のほか、ニューヨーク市など合計で1200の自治体や民間企業が、排出削減目標を達成する運動に参加している。こうした自治体の独自の行動は、トランプ大統領の自らの政治的な思惑を優先して判断をしていることへの強い憤りに違いない。

▼国民の7割がパリ協定に賛成しているとの調査結果も出ていた。また、離脱によって国際的な関係の悪化も指摘されていた。こうした状況下での政権による離脱決定であり、これに対抗する自治体や民間企業の動きは、トランプ大統領の代表性に対する異議申し立てといえる。

▼今後、草の根的な運動は組織化され、国を飛び超えて国際的な活動と連携するだろう。中央政府を飛び越えて、価値を共有する人々による民主的な動きが、自治体を巻き込んで起ころうとしている。代表性を失いつつある国の統治が迷走している。国に代わる新しい統治の行方に期待したい。

(神田玲子・NIRA総合研究開発機構理事)

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