公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)はこのほど、原子力発電所の再稼働が遅れていることなどによる電気料金上昇問題に関して、産業部門への影響に関する分析結果を発表した。東日本大震災以降に実施された電気料金値上げによる製造業の負担は年間で約4020億円増えており、これは従業員年間1人当たり約5・2万円に相当。このまま原発再稼働が遅れた場合は、最大で約40%の値上げ幅が予想され、電気料金値上げが全て雇用削減で対応されると仮定した場合、日本の製造業従事者の約14・8~17・6万人分の雇用が喪失するとの試算結果を公表している。
震災以降の原発停止で石油やLNG発電所などでフル稼働が続いている。この燃料費増に伴った電気料金値上げによる影響は大きく、多くの企業から経営への深刻な影響があることが報告されている。
RITEでは、工業統計を利用して、震災以降実施された電気料金値上げによる都道府県別、業種別の製造業への影響を分析。また、現在の電気料金値上げには一部原発の再稼働が前提となっていることから、この再稼働がない場合の料金値上げについても推計し、その場合の影響についても試算している。
分析結果を見ると、震災以降すでに実施された電気料金値上げによる電気代増分額は、日本全国平均(製造業平均)で、年間1人当たり約5・2万円。これは、日本の製造業全体の約9万4000人分の給与額に相当するという。
日本商工会議所のアンケート調査結果などから、電力料金値上げ分の販売価格への転嫁は難しく、雇用・人件費の削減を実施せざるを得ないとする企業は多い。そのため、原発の再稼働が遅れてさらなる料金値上げとなった場合には、製造業の経営を直撃することが予想される。仮に電気代増分すべてが給与額で調整されるとすれば、日本全国平均(製造業平均)で、年間1人当たり約8・2~9・8万円が削減され、また雇用で調整されるとすれば、同じく約14・8~17・6万人の雇用が喪失するとRITEは試算する。
予想される料金値上げ幅が大きい地域や、エネルギー多消費の製造業が多い都道府県への影響はとりわけ大きい。分析結果では、和歌山県では約20・8~24・9万円、大分県では約19・2~26・1万円、千葉県では約18・1~20・3万円、滋賀県では約18・2~21・8万円、北海道では約12・6~19・1万円と深刻な影響が予想されている。
業種別では、鉄鋼業や化学工業、窯業・土石業などの電力多消費産業などの業種で極めて影響が大きい。例えば、従業員1人当たりの年間電気代増分額は、鉄鋼業で約105~128万円、セメント製造では約105~131万円、圧縮ガス・液化ガス製造業に至っては、約348~418万円など大きな影響が出る結果となっている。
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