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特別寄稿 コロナや災害の影響も可視化できる「V―RESAS」の活用を 内閣府地方創生推進室および内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局

図表1 今回掲載されるデータ例

6月30日に「内閣府地方創生推進室および内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」が公開した「V―RESAS」が注目されている。新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」)が、地域経済に与える影響を6種類のデータ(人の流れ、飲食店、決済、POS、宿泊施設、イベント)を用いて分析、足元の経済状況を可視化している。特集では、この分析結果を「ぜひ企業活動に生かしてほしい」と話す「内閣府地方創生推進室および内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」からの特別寄稿で紹介する。

足元から地域経済を分析 6種のデータで動向把握

1.新型コロナウイルス感染症の地域経済への影響を可視化するV―RESASについて

(1)V―RESASの背景、狙い

内閣府地方創生推進室および内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局では、感染症が地域経済に与える影響を可視化するため、6月30日に「V―RESAS」を公開しました。元々、経済産業省が地域経済を可視化するためのRESAS(地域経済分析システム)を運用していますが、V―RESASではより足元のデータを見られるという意味を込めて、「Vital Signs of Economy:地域経済の健康状態のサイン」の「V」を頭に付けました。

公開当初は4種類のデータ(人の流れ、飲食店、決済、POS)でしたが、7月28日には2種類のデータ(宿泊施設、イベント)を追加し、現在は6種類が掲載されています。

(2)掲載データ

V―RESASで公開している、また、今後公開予定のデータは図表1のとおりです。

掲載されるデータは、個社・個人情報の秘匿の観点を踏まえつつ、今後さらに地域区分などを細分化していくことを検討しています。また、実際にご活用いただいたユーザーの意見を踏まえ、デザインや表示方法は随時改善し、新しいデータ項目や系列の追加も行っていく予定です。

2.データの見方・活用法

トップページ(下記QRコード参照)の最上部では、全国の移動人口(市区町村をまたいで移動した人数)の動向を表示しています。ここでは、前年同週比での増減率で、都道府県ごとに色分けしています。人流を最初に表示するのは、経済の活性化には人の移動が重要と考えているからです。「2020年7月第四週の前年同週比」では、まだまだ全国的にマイナス幅の大きい県が目立ちます。緊急事態宣言の終了後においても、感染症の影響で、人の移動がかなり抑制されているのが分かります。

その下には、「全国サマリー」で6種類のデータの今年1月以降の数字を表示しており、さらにその下では、6種類のデータについて都道府県や地域ブロックごとの動向が把握できるようになっています。トップページの一番下には、「解説コラム」では各データの見方や読み取れることなどを詳しく解説しています。

(1)人流(データ提供:Agoop)

続いて、都道府県別の画面を見ながら、各データについて紹介します。V―RESASのロゴマークの右横のプルダウンで、分析したい都道府県を指定してください。人流では、都道府県単位だけでなく、主要駅(当該駅を含む500m四方エリア)別に指定することも可能であり、滞在人口を①同じ市区町村内で移動している人、②同じ都道府県内で市区町村をまたいで移動してきている人、③異なる都道府県から移動してきている人の3区分に分けて、前年同週比を表示しています。観光客向けの事業を営んでいる方であれば、③が回復してくると集客も見込めるなどマーケティングにも活用いただけます。また、時間帯ごとのデータも見られますので、「6時~9時」の駅周辺の人口が多いと通勤・通学利用が多い、「18時~20時」の駅周辺の人口が減っていると宴会ニーズが落ちてきていて、自宅で食事をしている人が増加しているといった分析にもご活用いただけます。

例えば、「沖縄県」で見ると、③が3月第一週目から減少し始め、緊急事態宣言の延長が発表された5月第二週目にマイナス97%と、マイナス100%近くになっており、県外からの来訪者がほとんどいなかったことを示しています。②も③と比べると減少率が低いものの、5月第二週目にはマイナス49%となっているのに対し、①はプラスになっています。これは、市区町村をまたいで移動する人も減少し、自宅周辺にとどまっていることを示しています。

また、駅別で見ると、県全体に似たような傾向の駅が多いですが、「那覇空港駅」(図表2)では①も②も大幅にマイナスとなっており、飛行機を利用した沖縄県外への移動も減少していると推測されます。

(2)飲食(データ提供:Retty)

飲食データでは、飲食店ホームページの閲覧数の前年同週比を表示しており、実際の来店消費額などではないことには注意が必要ですが、行きつけのお店に行く場合などを除けば、インターネットで検索してから行く人が多いでしょうから、人々の飲食(外食)に対する行動の変容をかなりの程度見ることができると考えられます。

例えば、「大阪府」で見ると、大阪府全体では、「ファミレス・ファストフード」は他のジャンルと比べて減少率も少なく、回復し始めた時期も少し早いことが分かります。これは、他の都道府県を見ても似たような傾向が出ています。ファストフードは店頭で受け取れる店が多く、感染症を心配する人でも手軽に利用できるため、感染症の影響が軽微だったと推測されます。

また、エリア別で見ると、「なんば・心斎橋」エリア(図表3)では、「ファミレス・ファストフード」も他ジャンルと同じくらいの減少が見られます。これは、住宅地よりも都市部の方が、「ファミレス・ファストフード」に与えている影響が大きい可能性を示しています。

(3)消費

①決済データ(データ提供:ジェーシービー、ナウキャスト)

決済データでは、クレジットカードの情報を基に、各地域ブロックの消費の変化を、「小売業」と「サービス業」に分けて表示しています。

小売業では、どのブロックでも「EC」(電子商取引)の伸び率が堅調なことが分かります。これは、外出を控える人が多くなる中で、人々が実際に店舗に訪れる機会が減り、代わりにインターネット上で買い物をする人が増えている影響と思われます。

「決済から見る消費動向」の小売業で東北・北陸・中国・四国ブロックを見ると、「EC」の他にも「自動車小売業」が、感染症拡大以降でも前年比でプラスの月があるなど(図表4)、この4ブロックは他ブロックと比較して感染症の影響が小さかったことが分かります(図表5)。

またサービス業では、「電気・ガス・熱供給・水道業」や「コンテンツ配信」がプラスになっているブロックが多く、テレワークや外出自粛の影響が見られます。一方、外食はどのブロックも大きなマイナスになっているなど、業種によって傾向に顕著な差があることが分かります。

②POS(データ提供:日本経済新聞社、ナウキャスト)

POSでは、GMS(総合スーパー)やスーパーマーケットのPOSレジにより集計された売り上げ情報を基に、各地域ブロックの消費額の変化を、「変化の特徴的な品目」と「注目度の高い品目」と2パターンで表示しています。

「変化の特徴的な品目」では、どのブロックも「介護・衛生用品」の上昇率が突出しています。これは主にジェル状のアルコール消毒液によるものと考えられます。また、「プレミックス(小麦粉などをあらかじめ混ぜてあるもの)」や「生クリーム」も伸びています。一時期、外に遊びに行けない親子が、自宅でホットケーキやお菓子をつくることが多くなりましたが、それらの材料がよく売れたことが分かります。「スピリッツ」はジンやウォッカなどのアルコール濃度の高いお酒で、品薄となった消毒液の代わりに購入している人が増えていると推測されます。一方、外出や運動の機会が減り、「スポーツ飲料」の需要が下がっていることが分かります。

「注目度の高い品目」では、「家庭医療用品」(マスクなど)の上昇率が突出しております。感染症の拡大とともに需要が爆発的に伸び品薄状態による減少を経て、また供給の回復による増加傾向にあることが分かります。足元では少し落ち着いていますが、7月に入ってもプラス100%以上のブロックがほとんどです。また、7月2週目の九州・沖縄ブロックで、「水」の売れ行きが伸びているのは、7月の豪雨災害による避難の影響である可能性があります(図表6)。

このように、V―RESASは感染症の影響だけでなく、災害などが人々の消費行動にもたらす変化も見ることができます。

(4)宿泊(データ提供:観光予報プラットフォーム推進協議会)

宿泊では、宿泊者の分類と予約代表者の居住地ごとの宿泊者数の変化を表しています。

「北海道」を「宿泊者の分類ごと」で見ると、2月を境に急減し、5月にはほぼマイナス100%になっています。他県も同じように大幅な減少傾向が見られますが、観光業を主力している県にとっては大打撃といえます。今後「GO TO トラベルキャンペーン」や各県独自の観光施策がどう影響してくるのか、注目されます。

また、「神奈川県」を「予約代表者の居住地ごと」に見てみると、「一人」の「都道府県内」の宿泊者数は5月に入り、回復傾向にあります(図表7)。この傾向は「東京都」では見られませんが、その東京都周辺の県では同様の傾向のところもあり、近場でのビジネス利用などの需要が少しずつ戻りつつある可能性があります。

(5)イベント(データ提供:ぴあ)

チケット販売数では、イベントのチケット販売数の変化を地域ブロック内の都道府県別とジャンル別で表示しています。

こちらは、どの県もどのジャンルも、ほぼマイナス100%に近い状態となっています。段階的に収容人数制限の解除などが進んだ場合に、どれほど回復していくのか、今後の動向が注目されます(図表8)。

(6)キーワード検索(データ提供:ヤフー)※今後公開予定

今後公開予定のデータになりますが、ヤフーにデータ提供をいただき、現在どういったキーワードが検索されているか、その変化を見ることができるものを予定しています。これまで紹介したデータは、いずれも人々の行動の結果を表すものですが、このデータでは、人々の心情の変化を見ることができ、今後の行動の予測の参考になるものにしたいと考えています。

3.V―RESASの今後

V―RESASは、この国難をなんとかして乗り切りたいという思いをお持ちの民間企業にデータを提供していただいて成り立っているシステムです。今回初めて外部にデータを提供してくださった企業や、今回のために過去にない方法でデータを提供してくださった企業の皆さまに、この場をお借りして感謝申し上げます。

このシステムは、地方公共団体の政策立案のほか、地域経済を支える商工団体や地域金融機関の方々が企業支援などをされる際にも、活用していただけると考えております。データの見方でも記載したとおり、一口に感染症の影響と言っても、地域や時期ごとに差があり、業種やジャンルによっても異なります。各地域の方々が自ら、自分たちの地域への影響の大きさを把握し、より適切な行動を取るためにご活用いただければと考えています。

ここで、この記事を読んでいただき、実際にV―RESASを使っていただいた方にお願いがあります。

V―RESASは6月30日に公開したばかりのシステムであり、今後、随時改良を図っていく予定ですが、実際にV―RESASを活用いただいた方のご意見も反映したいと考えています。「こんなデータが欲しい」「こういう表示の方が分かりやすい」「こんな機能があると便利」などといったご意見・ご要望を、ぜひお寄せください。

また、実際にご活用いただいた事例を、他の地域の方々と共有したいと考えています。ある地域の方が「V―RESASのデータから、こんな施策を考えた」や「この施策の効果を検証するのに、V―RESASのこのデータを使った」といった事例を「解説コラム」内に掲載し、別の地域の方がこれを参考にする、そんなV―RESASの輪が広がっていくことを期待しています。

地域の多くのステークホルダーが地方創生に取り組んで、感染症に打ち克ち、日本経済・地域経済を回復軌道に乗せるために、V―RESASをお役に立てていただければ幸いです。

(注1)本稿は、8月11日時点で更新されたデータに基づき執筆しています。

(注2)今後、改善に伴いデータ区分などが変更される可能性がありますので、インフォメーションボタンの説明をご参照ください。

【お問い合わせ先】内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局ビックデータチーム

メールアドレスは、j.resas.j9j@cas.go.jp

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