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テーマ別企業事例 高齢社員活用のススメ シニア人材活躍で企業が若返る!?

事例3 年齢不問で定年なしシニアパワーで業績拡大

きむら(香川県高松市)

きむら太田本部・本店。大型駐車場を完備し、平日の昼間でも客足が途絶えない

18年連続人口減の香川県は、老年人口の割合が年々上昇し、2017年に過去最高を記録した。そんな中、シニア人材の積極的な雇用で大手スーパーを凌ぐ勢いをみせるのが、新鮮市場きむらだ。生鮮食品の中でも鮮魚に力を入れ、食のプロも買い付けに来るほどの人気を誇る。平均年齢45歳、従業員の29%が60歳以上というシニアパワーで一大旋風を巻き起こす。

多店舗展開をするべく積極的にシニアを採用

外見では人は分からないというが、スーパーマーケットも同じかもしれない。1907年創業のきむらは、地元密着型スーパーとして香川県高松市を中心に、香川県と岡山県に20店舗を展開している。店の規模は大小あるが、見た目は他店の佇(たたず)まいとそう変わらない。だが一歩店内に入って、ぐるりと巡ると生鮮食品売り場で足が止まる。精肉、青果もさることながら鮮魚コーナーの面積が広く、しかもトロ箱で今朝仕入れた鮮魚が種類豊富に並んでいるのだ。規模は個人経営の魚屋を超え、「魚市場」「水族館」と称されることも多いのも納得の品ぞろえだ。

「大手スーパーをはじめ、多くのスーパーがメーカー食材7割、生鮮食品は3割という構成です。でも弊社はその逆で生鮮食品が7割。大手と同じことをしても淘汰(とうた)されてしまいます。勝つのではなく負けない方法は何か。考えた末にたどり着いた方法です」

満面の笑みを浮かべて説明するのは代表取締役の木村宏雄さんだ。女性3人で細々と営んでいた奥さんの実家の食品小売店を、35年前に婿養子になって切り盛りし、2002年に社長に就任すると、社名をきむらに変更して、一気にチェーン展開を図った豪傑だ。

35年前から先見の明があった。まちなかから小売店は姿を消してスーパーマーケットが席巻する。車社会は加速し、大きな駐車場がある店に人が集まる。そして生鮮食品を買うことを第一目的に来店する客は増えると読んでいた。

「生鮮食品の中でも注目したのが鮮魚です。魚の扱いは難しい。ただ仕入れて並べればいいというものではありません。利幅は大きいのですが、職人の力が必要です。そして腕利きの職人の多くがシニア世代なので、年齢不問、60歳でも70歳でも経験者であれば採用してきました。定年? そんなものはありません」と豪快に笑う。

個々の技術やノウハウを尊重して売り場を任せる

当初は、職人集団をつくってテナントに派遣し、鮮魚を大量に仕入れては対面販売を積極的に行った。「鮮魚=きむら」というイメージ戦略で多店舗展開の足場を築く。この時に木村さんが心掛けたのは、職人たちに指図しないこと。その方針は今も変わらない。

「シニア世代は、腕に自信があってプライドが高い。実績重視で個々のやり方に一切口を出しませんでした。ただし、お店に来た人をワクワクさせる活気は必要と、対面販売に徹しました。旬の魚、調理方法などをお客さんに伝えて『おいしかった』とまた来店してもらう。そういう好循環の仕組みをつくっていきました」

店舗を1年に1店舗ペースで増やしていくにつれ、鮮魚目当てに来店する人が増え、中でも大きな魚をトロ箱に入れたまま大胆に売る箱売りのスタイルは、一般の人だけでなく、飲食店の料理人などの食のプロから好評を博した。

「飲食業界に売り込んだわけではなく、口コミで瞬く間に広がっていきました。プロも買い付けに来るという評判が、一般のお客さまの購買欲に拍車をかけ、信頼にもつながっていったのです」

結果は数字にも表れる。木村さんが社長に就任した当初は年間売上9億円だったが、その後は右肩上がりに伸びて2017年度は184億円に達している。シニアだからと給料を低く見積もることはせず、能力に応じて65歳以上でもチーフなら年収400万円以上、70歳の部長で600万〜700万円と地域の相場より高い。正社員、パートを問わず、働きたいという人が後を絶たないのもうなずける。

シニア人材の雇用で地元を元気にしていく

仕入れ方法でもスーパーの常識を覆す。生鮮食品はバイヤーが仕入れるか、仲卸に買い付けを任せるケースが多いが、同社では鮮魚売り場の担当者が自ら魚市場に行く。そのため各店舗で並ぶ魚が違い、同じ魚でも価格が異なる。

「魚市場で各店舗の担当者が競り合っていることも頻繁です。同業者からしたら不思議な光景のようですが、競り勝つことでモチベーションも上がり、経営者感覚で売り場に立つことができます」

そう言って木村さんは、各店舗が競うことを奨励する。店舗数を順調に増やすだけではなく、グループ会社の志度魚市が香川県東部にある志度地方卸売市場を運営し、漁師や買い付けに来る人にも喜ばれる市場づくりにも貢献している。さらに2018年3月には10億円を投資して瀬戸内水産加工センターを立ち上げ、地域雇用拡大、漁業の活性化をけん引する。

「いくつになっても働き続ける秘訣(ひけつ)は、やりがいと対価。この両輪があって人は動きます。給料がいいから正社員、パートを問わず働きたいという人は後を絶ちません。今後はスーパーよりも加工場を増やして、各地の魚市場から直送された鮮魚を全国各地に届けていきたいと考えています。生産者、市場、飲食業、一般家庭を元気にしていく。シニア世代の活躍の場は、きむらにはまだまだあります」

17年度高年齢者雇用開発コンテストで、厚生労働大臣賞の最優秀賞を受賞したのも伊達(だて)でない。来年には21店舗目のオープンも決まっており、同社の快進撃は今後も続く。

会社データ

社名:株式会社きむら(新鮮市場きむら)

所在地:香川県高松市太田上町1090-1

電話:087-868-5000

HP:http://www.skimura.jp/

代表者:木村宏雄 代表取締役

従業員:1090人

※月刊石垣2018年10月号に掲載された記事です。

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