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テーマ別企業事例 高齢社員活用のススメ シニア人材活躍で企業が若返る!?

事例4 定年の引き上げと健康管理の徹底で定着率アップ

平和タクシー(宮崎県宮崎市)

知識と経験を生かして自動車整備に当たる従業員

定年の引き上げと健康管理の徹底で定着率アップ

長きにわたり宮崎市で営業を続けてきた平和タクシー。従業員が年々高齢化し、60歳以上が大半を占める現状を考慮し、2017年に定年を60歳から66歳に引き上げた。また、それ以降も一定条件の下に、年齢の上限なく雇用する継続雇用制度も導入。長年培った経験を生かして、シニア社員は皆生き生きと業務に当たっている。

従業員の9割が60歳以上

タクシー乗務員というと、全般的に高齢な人が多い印象がある。大都市圏はまだしも、地方になるとその傾向は顕著である。そんなタクシー業界も近年、人手不足の波にさらされ、人材の確保は切実な問題になっている。そうした背景から、2017年に雇用制度を見直したのが、宮崎市にある平和タクシーだ。

同社は1971年に創業し、長く地元の足として営業してきた。2014年に、市内でタクシー事業や中古自動車販売業などを展開する日の丸タクシーグループの傘下となり、同グループ代表の山元良一さんが同社の社長に就任した。当時、同社従業員の年齢構成比は50代が約10%、60代が約65%、残りが70歳以上と、60歳以上が9割を占めていた。

「私がここに来る前から、ハローワークや有料求人広告、最近ではWEB求人サイトなどを利用して従業員を募集していますが、応募してくるのは年間数人程度。しかもそのほとんどが、60代以上という状況でした」と山元さんは説明する。

もともとタクシー乗務員は、仕事をリタイアした人が第二の人生として始めるケースが少なくない。若年層の採用が困難である以上、高齢者の活用に力を入れざるを得ない。そのため高年齢者雇用アドバイザーは、以前から同社に定年の引き上げを助言していたという。

ところが、前社長はそれに消極的だった。就業規則を改定するにはさまざまな手続きが必要で、手間と時間がかかる。実際には、定年を過ぎてもそのまま働く者が多く、改めて制度化する必然を感じなかったのだろう。

就業規則の改定とともに従業員の健康管理を徹底

改定を後押ししたのは、2016年に創設された「65歳超雇用推進助成金」だ。それを機に、山元さんは定年を60歳から66歳に引き上げた。同時に、66歳以降も一定の条件の下、年齢に制限を設けない継続雇用制度を導入した。

「まさに渡りに船でした。66歳としたのは、65歳にするより助成金額が多かったからです。それに当時、すでに従業員の半数が60代後半だったため、65歳にこだわる意味もなかったんです」

同社では、66歳以降も役職や給料はそれまでと変わらない。以前も、契約更新なしに定年後も働くことはできたが、きちんと制度化されたことで、従業員から「うれしい」「安心だ」という声が聞かれたという。

とはいえ、人の命を預かる業種だけに、安全面の強化は欠かせない。山元さんは以前から、従業員の健康管理を最重要課題と位置付けてきた。その一環で作成したのが、「健康情報管理表」である。従業員ごとに、疾病の有無、既往歴、治療や通院歴などを一覧表形式にまとめたもので、3カ月ごとに更新している。健康診断の結果が思わしくない者には、個別に面談を行う。

「『要再検』『要治療』と言われた者には、強く受診を勧めます。受診したと答えたら、どの病院に行ったのかを聞くし、場合によっては本当に行ったか、薬袋を持ってきてもらい確認することもあります。それらの情報もすべて管理表に記入して履歴を残していますが、重要な個人情報なので常務が責任を持って保管しています」

山元さんの分析によれば、健康上の問題がある者の中で、2割は自分で各科のかかりつけ医で積極的・定期的に検診を受けている者、7割は健康診断は普通に受診し、何かあったときにはきちんと病院に行く者、そして1割が勧めても簡単には病院には行かない難しい者なのだそうだ。そうしたいわゆる“病院嫌い”の人ほど、健康を過信し、病気の芽を見逃がしてしまう。その結果亡くなってしまった従業員の葬儀に参列するたび、悔やんでも悔やみきれない思いをしてきただけに、「嫌がられても口を酸っぱくして」伝えているという。

高齢従業員の職域拡大が課題

同社の柔軟な勤務シフト制も、健康維持の一助になっている。決まったタイムシフトはあるのだが、乗務員の希望に応じて午前のみの勤務を認めたり、予定より早い退社を許可したりしている。「その辺は緩い会社なので」と山元さんは笑うが、加齢とともに無理が利かなくなるのは確かだ。その分、配車できる台数が減ってしまう場合もあるが、グループ会社のタクシーを動員するなどしてやりくりしている。そうした配慮のかいもあってか、従業員の定着率は他社と比べて良好だという。

「新たな課題は、いかに高齢乗務員の引き際を見極めるかです。運転に必要な視力が衰えてきたり、メンタル面で病んだりするケースもあります。続けるのが難しいと判断すれば、本人と面談して身の振り方を決めることにしています」

その一例に、乗務員から内勤に異動した者もいる。今年80歳になる最高齢者もその1人で、長年の経験を生かして運行管理責任者を務め、配車や電話対応、クレーム受付など要の業務をこなしている。ただ、全員が配置転換できるわけではない。

「高齢者の受け皿の確保は急務です。現在、日の丸タクシーグループが運営する中古車販売会社で洗車や整備を担当してもらうなど、職域拡大を図っているところです。健康とやる気がある限り、必要な戦力として働いてほしい」と山元さんは展望を口にした。

会社データ

社名:株式会社平和タクシー

所在地:宮崎県宮崎市江平東2-3-14

電話:0985-22-3136

HP:thttps://thanks398.com/

代表者:山元良一 代表取締役

従業員:58人

※月刊石垣2018年10月号に掲載された記事です。

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