意見書「観光立国実現に向けた隘路打開への取り組みについて」(概要) リピーターの獲得が鍵

新たな特産品が並ぶ目標への挑戦!/日本の産業別労働生産水準(対米国比・H25)

日本商工会議所は4月26日、意見書「観光立国実現に向けた隘路打開への取り組みについて」を公表した。本意見書は政府により策定が予定されている「観光ビジョン実現プログラム2017」に、当所の意見を反映させるため4月20日開催の第665回常議員会において取りまとめたもの。特集では本意見書の概要を紹介する。

Ⅰ.観光資源・環境の充実策

1.歴史・文化・芸術資産などの観光への利活用促進

⑴歴史的建築物や「空き建築物」など既存ストックの有効活用

①歴史的建築物の利活用促進

〇国家戦略特区で認められている旅館業法の特例措置を広く全国に拡大していただきたい。(以下、略)

②空き店舗や廃校などの「空き建築物」の再利用促進

〇耐震性の確保など一定の安全基準を満たすことを前提に、地域における空き建築物の再利用が促進されるよう、空き家再生等推進事業の継続および拡充を講じていただきたい。

⑵世界遺産登録および日本遺産認定のさらなる促進

〇世界遺産登録のみならず、登録前後の当該施設・自然などの保全・維持および観光客の受け入れ態勢の整備・充実を強力に支援いただきたい。

〇「日本遺産」の認定促進や、重要文化財・重要伝統的建造物群保存地区などの公開を促進する支援事業の拡大が望まれる。

⑶文化芸術施設とその所蔵品のさらなる利活用促進

〇開館時間の拡大、積極的な所蔵品や施設の公開、さらには公演やパーティーへの利用、周辺観光施設との連携などが望まれる。

2.地域の観光の魅力再発見と発信

⑴スポーツイベントを活用した観光振興の推進

〇国際的スポーツイベントを活用した各地観光資源の国内外への発信と観光振興への取り組みの強化が期待される。

〇国・地域が一体となり、「東京2020参画プログラム」や「beyond2020プログラム」と連動した地域の観光振興を強力に推進していくことが求められる。

⑵自転車走行空間の整備および利用促進に向けた取り組み(略)

⑶各地における食文化の観光資源としてのさらなる活用

〇食文化を観光資源として効果的にPRするとともに、国産食材の活用や食の地域ブランド化も鋭意推進していただきたい。

3.ユニバーサルツーリズムの推進

⑴観光案内所などにおけるバリアフリー化の促進

〇観光案内所をはじめ観光・交流拠点におけるLAN環境整備、トイレなどの改修、体験学習スペースの設置、多言語対応スタッフの配置などバリアフリー化の促進につき支援を拡充していただきたい。

⑵各地交通機関におけるICカード、共通パスの導入やカード決済システムの整備の促進(略)

⑶多言語対応の促進に向けた支援の強化

〇「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」に基づき、英語表記、ピクトグラムの普及を軸に、国において統一した共通の外国語表示の整備への支援策を強化するとともに、多言語音声翻訳システムなど、地域におけるICTの有効活用を積極的に推進していただきたい。

⑷若年層の需要喚起に向けた取り組みの推進

①観光教育と教育旅行の促進

〇低コストで旅行が可能となる周遊券や夜行交通手段の開発・整備、小学校から大学までの学校教育における観光に関するプログラムの導入、保護者に対する旅行への理解促進などとともに、地方自治体においては、観光部局と教育部局の連携を強化し、遠隔地域間(都市と山村間など)による長期休暇時の短期交換留学制度や、体験型観光カリキュラムの充実など、教育旅行の一層の促進を図っていただきたい。

②若者のパスポート取得費用などの軽減

(略)

4.広域連携観光の推進

⑴共通したテーマやストーリーによる広域・遠隔地間連携の促進

〇広域連携による観光推進の母体となる地方自治体、観光協会などに対し、キャンペーン・プロモーションといった広報面などでの支援をお願いしたい。

⑵「広域観光周遊ルート」における具体的プロジェクトの推進

〇各ルートにおける具体的なプロジェクトの推進を加速すべく、関係者のスキルの向上に向けた専門家の派遣などの支援を拡充していただきたい。

⑶東北をはじめとする被災地域の観光復興

〇東北絆まつりなど、東北6県の連携に基づく取り組みを国内外により強力にPRするなど、風評被害の払拭(ふっしょく)に尽力いただきたい。

〇熊本城などの観光インフラの早期復旧に尽力いただきたい。

〇被災した地域への教育旅行の推進により、震災の教訓と防災や復興への取り組みなどを学ぶ機会を広げていただきたい。

Ⅱ.観光産業の近代化・効率化の促進策

1.観光産業の生産性向上

⑴ICTの活用による観光産業の生産性向上

〇サービス等生産性向上IT導入支援事業の継続をはじめ飲食・宿泊業などが取り組む、クラウドサービスなどを活用した予約・顧客管理や、SNSによるプロモーションなど、ICT導入のための支援を拡充し、小規模事業者にとっても利用しやすい支援策を講じていただきたい。

⑵業務の共同化による経営効率の向上

〇消耗品や食材などの共同調達、共同による商品開発やPR・マーケティング、共同研修による人材育成、プラットフォーム形成に対する支援が必要である。

⑶旅行需要の平準化を図る休暇取得の促進

(略)

2.宿泊施設の充実と多様化への対応

⑴多様な宿泊施設の提供による宿泊供給能力の拡大

〇宿泊施設に対する民間投資を促進することが必要であり、そのために税制上の優遇措置や地域金融機関、REVIC(地域経済活性化支援機構)、日本政策投資銀行などによる地域活性化ファンドを活用した金融上の支援措置を拡充していただきたい。

〇トイレなどの施設の改修、無料無線LANの設置、泊食分離料金の導入、カード決済への対応(外国語の案内表記)などに積極的に取り組む事業者への重点的支援が求められる。

〇官民一体となって、衛生・安全の確保と観光の促進を両立させる制度、ルールの確立が急務である。また、民泊については各地域の事情により、必要性や利用方法が異なることから、各地域の実情に即した制度設計が求められる。

3.体験型観光の促進に向けた取り組み加速と体制整備

⑴参加体験型の新たな観光ニーズの掘り起こし

〇テーマごとに地域のネットワーク化を図り、共同プロモーションを図ることで、新たな旅行需要を掘り起こすことが必要である。

⑵インバウンドの旅行手配を行うツアーオペレーターの質の向上

〇訪日旅行の一層の品質向上と、安全確保の観点から、ツアーオペレーターの登録制度を早期に創設し、ツアーオペレーターの質が担保されるような運用を行っていただきたい。

4.観光を支える人材の育成・確保

⑴持続的な観光地経営に向けたDMOの形成、運営への支援拡充

〇自治体や観光協会、観光関連事業者、地域経済団体などが一体となった体制づくりが必要である。国は、平成27年12月にDMO(Destination Management/Marketing Organization)の登録制度をスタートしたが、いまだ正確な理解が進んでいるとは言い難く、親しみやすい名称・呼称を決め、引き続き、DMOに対する地域の理解醸成のための活動を実施していただきたい。

〇新型交付金による財政支援や関係府省庁で構成される連携チームによる支援体制を強化し、DMOの形成・確立を強力に支援していただきたい。例えば、公益社団法人日本観光振興協会および公益社団法人日本交通公社が運営する「DMOネット」(*)の活用促進など、専門人材・専門事業者のマッチングの取り組みを支援いただきたい。(以下、略)

*DMOネットとは、インターネットを介して、データ収集・分析などの支援や、外部の専門事業者・専門人材についての情報取得やマッチング、DMO同士の情報交流を行うサービス。

⑵外国人留学生の活用

〇観光産業での外国人留学生の採用・定着を促進するため、国においては、就労が認められる在留資格の要件緩和などを進めるとともに、関係機関と連携して、日本語やビジネスマナーなどの各種研修や中小企業との就職マッチング事業など総合的な支援策を講じていただきたい。

〇外国人が日本料理を有償で働きながら学ぶことができる総合特区の特例制度「特定伝統料理海外普及事業」による全国への拡大が求められる。

Ⅲ.安全な観光の実現と観光基盤整備の推進策

1.観光に関わる総合的な安全対策の確立

⑴旅行者の安心・安全の確保に向けた取り組み

①地方自治体・事業者・自治会などとの連携による災害時情報提供ポータルサイトの構築と普及、的確な災害情報発信システムの整備

②災害への対応事例を踏まえた危機管理マニュアルの整備、その周知のためのセミナーや研修、防災訓練などの実施、ICTを活用した緊急時の外国語による災害情報の発信、観光関連事業者におけるBCP(事業継続計画)の策定促進

③公園・公民館・学校・体育館などの公共施設における無料公衆無線LAN環境の整備

④在日公館や運輸機関との連携による大規模災害・危機後の訪日外国人旅行者の安全(避難・誘導・供食対策)確保と確実な帰国への支援策の策定と、危機発生直後の復旧に向けた計画策定、およびその実施体制の整備

2.旅行需要の拡大に資する交通体系の整備

⑴地方空港への路線拡大などによる訪日外国人旅行者の各地への分散

〇好調なインバウンド需要を取り込んでいくために、地方空港を活用して訪日外国人旅行者を各地へ直接呼び込み、地方創生につなげていくことが重要である。

〇地方空港への外国エアライン、特にLCCの就航を促進すべく、着陸料の軽減や空港からの二次交通整備、地域住民の空港利用促進などの取り組みを積極的に推進する必要がある。(以下、略)

⑵地域交通の観光への活用促進

①二次交通の充実に向けた地方自治体や地域交通事業者への支援

〇新幹線の停車駅などと周辺地域とを接続する地域鉄道、バスなどの二次交通(地域公共交通)網の整備とミッシングリンクの解消の促進は、観光ルートの整備・構築を推進する前提条件であり、国による整備への強力な支援が求められる。その際、一定の収益確保が見込める形で交通業者の参入を促す仕組み作りなどが求められる。

②二次交通の観光資源化(略)

⑶観光地における渋滞・混雑解消の推進

〇一部の観光地で実施されているパーク&ライドやバスレーンの活用・推進など公共交通との連携や、観光地周辺における車両進入規制の普及が求められる。

〇ビッグデータ活用によるきめ細かな渋滞情報の提供やレンタカーを利用する訪日外国人旅行者に対する日本の交通施設・ルールの周知徹底、カーナビを通じた運転支援の普及が求められる。

⑷クルーズ船の受け入れ拡大に向けたハード・ソフト整備の推進

〇旅客船ターミナルの整備や周辺地域への誘客を促す交通インフラの整備など、ソフト・ハード両面での対応への支援を強化いただきたい。

3.国際的イベントを契機とした受け入れ態勢の整備やプロモーションの展開

⑴戦略的な訪日観光プロモーションの推進と海外へのコンテンツの供給強化

〇国は、日本政府観光局(JNTO)とクールジャパン機構、日本貿易振興機構(JETRO)との連携を強化し、一元的かつ責任を持って訪日プロモーションを促進する体制を構築していただきたい。(以下、略)

⑵大都市市場に対する各地域からの観光プロモーションの促進

〇国・東京都・地方自治体は連携して、地域情報をこれまで以上に効果的に発信していくための仕組みを構築していただきたい。

⑶全国各地の文化や観光資源などの世界への発信

〇「東京2020参画プログラム」や「beyond2020プログラム」と連動した地域の観光振興の支援

〇「ホストタウン」として広げる取り組みを全国で推進し、ホストタウンに登録された地方公共団体の海外への情報発信を強力に支援していただきたい。

⑷誘客効果の高いウェブサイトの拡充およびその支援

〇ウェブサイトの充実、多言語化は急務である。また、観光地で入手できるパンフレット類も、ウェブサイトへの掲載や多言語化が非常に有効であり、国においては、これら対応に一定の支援を行っていただきたい。

4.地域の観光戦略策定や見直しに不可欠な観光統計の整備と活用の促進と情報発信体制の構築(略)