このコーナーでは、下請取引に関する「かけこみ寺」に相談があった事例を参考に、中小企業の取引上のトラブルや疑問点の解決の基本的な考え方や留意点を解説します。今回は「一般取引関係」の「瑕疵の有無と修補請求」についての相談事例をご紹介します。
重要な点は必ず書面などで確認
Q.
個人事業者Aは、ソフト開発事業会社B社から200万円でソフト開発の注文を受け契約書を交わしました。契約書はB社に渡してありますが、同社は印鑑を押して返送してくれませんでした。前金100万円を受領したので、ソフトを完成して納品しましたが、ソフトに瑕疵(かし)ありとして全面やり直しとなり再納品しました。再納品後、更に追加の再手直しの指示がありましたが、残金が支払われていません。どうしたらよいでしょうか。
A.
注文を受けたソフトに「瑕疵」がある場合とは、「通常もしくは契約上予定した性質を有しない」ことをいいます。AB間で当該ソフトをどのように製作するかという合意内容は、契約書や発注書、仕様書、契約過程でのB社の指示内容などにより決定されます。 ソフトに「瑕疵」があったかを客観的に吟味するには、契約内容やB社の指示内容のチェックが必要です。「契約書」の1通の返還を求め(契約書の返送がなくても契約それ自体は有効に成立しています)、B社からの仕様書や作業指示書面(FAXやメールによるものでも十分です)の内容などから「全面やり直し」や「追加の手直し」の要否を改めてチェックして下さい。
<留意点> 製作したソフトにAの責任に基づく「瑕疵」があれば、B社からの「瑕疵修補」の請求に応じざるを得ません。取引上のトラブル防止は、当初の契約条件や指示内容だけではなく、途中の連絡や交渉経緯(仕様の変更などの有無)に関する内容も大切です。どのような約束(条件)であったかという「証拠」が大切となります。将来の紛争をできるだけ避けるためにも、「口頭」でのやりとりは止めて、重要と思われる点は必ず書面(FAXかメールでも可)で確認しておくようにしましょう。
提供
公益財団法人 全国中小企業取引振興協会(全取協・ぜんとりきょう)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営。
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