◆「G7伊勢志摩首脳宣言」について
今回の伊勢志摩サミットにおいて、議長である安倍総理のリーダーシップのもと、先進国が主導して世界の諸課題を解決していくという力強いメッセージが示されたことを歓迎する。
新興国経済の停滞などの不透明感がある中で、持続的かつ安定的な成長に向けて、主要国が協調して、金融、財政、構造政策に取り組むと表明されたことは意義のあることだと思う。また、過剰生産能力問題に緊急に対処することや自由貿易の促進についても認識が共有されたことを大いに評価する。
今回のサミットを機に、各国と密に対話する多くの機会を得られたことで、それぞれの重要な課題への相互理解が深まるとともに、テロ対策、貿易、環境・エネルギーなども含めた世界を取り巻く重要なテーマについて、一定の共通認識を得られたことと思う。
首脳宣言を受けて、議長国であった日本においては宣言内容を率先して取り組むことが求められる。そのためにも、既に必要な施策が出揃っている成長戦略をはじめとした政策が、早期かつ確実に実行されることを期待する。 (5月27日)
◆安倍総理の消費税引き上げ時期の再延期表明について
本日、安倍総理が、消費税率10%への引き上げ時期の再延期を表明されたことは、世界経済が下振れリスクに直面しているという認識の下での判断とはいえ、残念である。
商工会議所は、予てから社会保障制度の持続のためには消費税率の10%への引き上げが必要であると主張してきた。わが国が「人口減少と超高齢化の加速」という構造的課題に直面する中で、少子化対策の実行のためにも、消費税の引き上げは必要である。
社会保障給付の一層の重点化・効率化を徹底するとともに、平成31年10月の税率引き上げが確実に実施できるよう、経済環境の整備を進めていくことが重要である。
また、税率引き上げの再延期とあわせて、経済対策が講じられることが表明されたが、例えば真に必要なインフラ整備や少子化対策の加速など、将来の成長率を高める分野に重点をおくべきである。
今、わが国に必要なのは、わが国経済が成長する実力を示す潜在成長率を高めることである。そのための施策は、日本再興戦略やニッポン一億総活躍プランなどに網羅されている。政策メニューは出揃っているので、安定した政権の下で、それらを迅速に実行に移していただきたい。(6月1日)
◆「日本再興戦略2016」「ニッポン一億総活躍プラン」ならびに「骨太の方針」の閣議決定について
わが国が直面する人口減少社会の構造的課題の克服に真正面から取り組み、持続的な成長を実現していくためのサプライサイド政策が網羅された。また、骨太の方針において政策の全体像が一覧的にわかりやすく示されており、高く評価する。
東日本大震災の復興・熊本地震への対応を強化すると同時に、第4次産業革命による新たな産業創出、少子化対策・働き方改革による労働力確保、観光・農林水産業の成長産業化による地方創生、ICT活用等による中小企業の生産性向上、規制改革・行政手続きの簡素化など、低下しているわが国の潜在成長率を引き上げるのに必要な分野に幅広く目配りがきいた内容となっている。
また、一億総活躍社会の基盤となる国民の予防医療・健康づくりを初めて戦略の柱に据えたことも大きな意義があり、支持する。
一番の課題は、実効性とスピードである。財政健全化の制約がある中で、今後少子化対策を実行していくためには、安定的な恒久財源をいかに確保するかが重要である。経済の好循環による成長の果実を分配するとともに、社会保障給付の重点化・効率化、高齢者の応能負担割合を高めるなど、世代間の負担の分配を軸にした社会保障改革により財源を生み出し、少子化対策にシフトする財政構造改革が必要不可欠である。
また、定められたKPIについて、しっかりとPDCAサイクルを回し、構造改革を早期かつ確実に進めることをお願いしたい。
商工会議所としても、成長戦略の実行主体である民間企業、とりわけ中小企業の活力強化、ならびに地方創生、一億総活躍社会の実現に全力を尽くす所存である。(6月2日)
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