日本商工会議所と東北六県商工会議所連合会では、「遊休機械無償マッチング支援プロジェクト」について、汎用工作機械、ボール盤、溶接機など被災地で特に希望の多い機械や設備に重点を置き、発掘・マッチングを進めている。これまでに、全国117の商工会議所から5132件の登録があり、そのうち、商工会議所の会員企業371社から提供された機械など2497件のマッチングが成立(7月15日現在)。被災地の企業約257社に送られ、すでに活用されている。そんな中で、注目を集めているのが刈谷商工会議所(愛知県)の取り組みだ。17日に東京で行われた日商の中小企業委員会で活動事例を報告した加藤善弘事務局長は、「『役に立ちたい』という思いから全ては始まる」と強調。特集では、「被災企業よし」「提供企業よし」「商工会議所よし」の刈谷式CSRの実践により、実績を積み重ねている同所の取り組みを紹介する。
独自のCSRを実践
刈谷商工会議所では、遊休機械無償マッチング支援プロジェクトがスタートした当初、会員企業に意見を聞いたところ、「機械には、使い手のクセが付いている」「機械は移動させると壊れやすい」「中古を贈るのは失礼」との消極的な意見が相次ぎ、参画を断念した。しかし、豊田自動織機の協力会社で構成される「豊永会」から社会貢献活動の一環としてプロジェクトへの参画希望の連絡があり、風向きが変わる。豊永会33社から118点の応募があったのだ。
輸送やマッチングの問題など、仙台商工会議所の機械の目利き人との打ち合わせを重ねた結果、平成24年8月、ついにマッチングが成立。豊永会から提供を受けた91点の機械や工具などを被災地に贈呈した。
ここから、「刈谷」と「東北」を結ぶ架け橋となる事業にしようと刈谷らしい取り組みが本格化する。「被災企業よし」「提供企業よし」「商工会議所よし」の「三方よし」の考えを企業のCSR(社会貢献活動)に結び付けて実践した。
マスコミを上手に活用
市長などを巻き込んだ刈谷における出発式、被災地での贈呈式の開催とともに、マスコミに取り上げられやすいよう工夫した結果、同所の取り組みを地元マスコミなどが大きく報道、地域全体の盛り上がりに発展している。
同所は、遊休機械は思わぬ業種にも「潜んでいる」と、多業種に協力を呼び掛けた。老人介護施設から車イス、仏壇屋からはハンドリフトの提供があった。
あらゆる業種に募集をかけることで、取り組みの裾野を広げるとともに、中古市場の確立している工具・機械やトラック・ブルドーザーなど、マッチングしやすい分野に重点を置いた。さらに、会員企業との情報交換を密にすることで、継続的な支援が実現した。
提供機械などの整備・点検・清掃も徹底。被災地で即戦力として提供機械が活躍することにつながった。提供企業の社会的評価の向上にも気を配った。
取り組みを通じて、同所の社会的評価の高まりも実感する。会員企業との関係強化につながり、共済事業など他の事業にも波及効果があった。市外の事業者や一般市民からも反響があった。
平成24年8月以降、122事業所から1180点のマッチングに成功。協力事業所数では日本一の実績を残している。
同所の加藤事務局長は、「復興支援に協力したいが、どうしたら良いか分からない事業所が数多くある」と指摘。商工会議所が、そうした事業所の支援の気持ちを行動に結びつけるまとめ役を積極的に担うことの意義を強調する。
震災から3年が経過し、事業を再開した被災事業者からは、本来の工場・店舗などで本格的に操業し始めるための機械・設備などについての要望が高まっている。「三方よし」の刈谷式CSRの取り組みが復興の加速を後押しする。
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