特集 2016年版小規模企業白書(概要) 人手不足依然止まらず 売上高増加 商圏拡大が鍵

政府はこのほど、2016年版小規模企業白書を閣議決定した。白書では、小規模事業者全体の「動向」「業績良好な小規模事業者の特徴」「フリーランスの未来」「小規模事業者のたくましい取り組み」などを提示。特集では、その概要を紹介する。

第1部2015年度の小規模事業者の動向

景況感

○小規模事業者の業況判断DIは、持ち直し基調の中にも弱い動きが見られる。

○足元の小規模事業者の水準は、中規模事業者の水準と比べて、依然として低い水準。

○小規模事業者の従業員数過不足DIは、低下傾向が継続。足元では、中規模・小規模事業者ともに人手不足感が依然として強い。

事業者数の増減

○小規模事業者数は、約9・1万者減少。その要因は、個人事業者の減少。法人数は減少せず。

○減少の背景として、直近(2014年)では自営業主の高齢化が一段と加速。

○年齢階級別では70代が最多(約80万人)となっている。

○自営業主の離職理由の第一位が「病気・高齢のため」、次いで「事業不振や先行き不安」「会社倒産・事業所閉鎖のため」と続く(図1)。

○平成24~26年の間での開業は約28・5万者、廃業は約45・7万者。事業活動の新陳代謝が相当程度に行われている。

○業種別に見ると「小売業」や「製造業」「建設業」の減少が顕著。一方、「医療・福祉」や「教育・学習支援業」などは増加(図2)。

○事業者数が大幅に減少する中、売上高は微増し減少していない。24~26年の3年間で約0・2兆円(プラス0.1%)増加。

商圏・売り上げ

○小規模事業者の売り上げの約6割は「同一市町村内」が販売先。「近隣市町村」向けの約2割と合わせると8割となっている。

○売り上げが増加傾向にある者のうち、約7割で商圏が拡大傾向。業種特性上、「宿泊業」や「製造業」「卸売業」でより商圏拡大の傾向が強い。売り上げが増加傾向で商圏が減少傾向にある者は1.8%に過ぎず、売上高を増加させるためには商圏の拡大が必要。

○売り上げが増加傾向の者は「得意先や顧客がいる」「商品・サービスの品質と信頼性」を上位要因に挙げているのに対し、減少傾向の者は「商圏自体(取引先や顧客)の景気が悪い」と回答した者が最も多い(図3)。

IT活用

○情報管理面のIT活用状況は、事務処理・経理ソフトの活用が比較的高く、それ以外は総じて低い。ITを全く活用していない者も約2割存在している。

○宣伝面でのITの活用はホームページが最も多く約4割を占め、インターネット受注を導入している者は17・1%。このうち、インターネットでの受注比率は1~20%未満が約6割を占め、0%も約1割。

○インターネットでの受注比率の高い者の方が、売上高が増加傾向にある(図4)。

○ホームページなどの更新頻度は、6割が「不定期」であるが「毎日~1カ月ごと」に更新するものも約3割存在する。

効率的な経営

○経営計画を作成したことがある者は約5割。半数は経営計画を作成したことがない。業種別では、「宿泊業」「製造業」で作成した割合が相対的に高く、「建設業」「生活関連サービス業」などでは低い。

○経営計画を作成したことがある者は、作成したことがない者に比べて売上高増加の傾向が高い。

○経営計画を作成した背景・動機は「補助金申請で必要となったから」が最も多く、経営計画の作成の効果は「経営方針と目標が明確になった」が最も多い。作成にあたっての相談先は「商工会・商工会議所の経営指導員」が最も多い。

短期・中長期的側面の取り組み

○日々の経営努力の取り組みでは「集客・販売力向上」と「業界団体会合やセミナー参加などによる情報収集」が多い。

○リピーター客獲得のための取り組みでは、「商品・サービスの信頼性」と「納期遵守や丁寧な接客に基づく信頼獲得」が多い。

○経営上の悩みや課題の解決の際に利用した支援機関は「商工会・商工会議所」が最も多く、次いで「経営者仲間」の順となっている。

○中長期的な事業展開で重要と考えているものと、実際の取り組みで最も差があるのは「後継者や従業員の確保・育成」。販路拡大や新商品開発を含め、重要性は高いと認識しつつも、取り組みが進んでいないことがうかがえる。

人材育成

○人材育成の取り組みの有無は約4割の者が「取り組んでいる」と回答。業種別では「建設業」「製造業」の順で割合が高くなっている。

○人材育成に取り組んでいない者の理由は、「時間的余裕がないから」が最も多い。

○人材育成の狙いや目的では「技術・技能の向上」が最も多く、「商品・サービス知識の向上」「コミュニケーション力(接客や交渉)」と続く。

○業績傾向は、人材育成に取り組んでいる者の方が取り組んでいない者よりも良い(図5)。

事業承継

○事業承継後「新しい取り組み」を実施した現経営者は約7割。

○「事業承継する直前の業績傾向」と「新しい取り組みを実施後の業績傾向」を比較すると、事業承継する直前の業績傾向では「上昇基調」が23・2%だったのに対し、新しい取り組みを実施後の業績傾向は「上昇基調」が57・5%と大幅に増加。

○新しい取り組みの具体的内容では、小売業では「店舗の改装・リニューアル・駐車場整備」が最も多く、製造業では「取引先拡大(販路開拓)のための営業活動」が最も多い。

○「事業承継(後継者)の方針」では、約3分の1が「当面必要なし」、約3分の1が「後継者や候補がいる」、残りの3分の1が「後継者候補が見つからない」や「廃業予定」など。

○「承継したいが現時点で後継者候補が見つからない」ものの「親族以外への事業承継」について、抵抗感がある者52・1%。その理由の上位は、「親族(同族)で経営しているため」と「事業所・店舗などと居住場所が一体のため」など(図6)。

○「廃業予定者と廃業を考えている者」の「廃業を考えている理由」は、「高齢化のため体力・判断力の低下など」が最も多い(図7)。

商工会・商工会議所

○経営指導員が、相談・指導対応を実施した小規模事業者の業種では、小売業(26・1%)が最も多く、次いでサービス業(18・2%)、建設業(16・8%)、飲食店・宿泊業(16・4%)となっている。

○増加傾向にある相談内容は「廃業」「販路開拓」「市場調査、事業計画の策定や見直し」などであるのに対し、解決が難しくなっている相談内容は「人材の確保育成」「新しい商品・サービスの開発」「販路開拓」が上位となっている。また、相談件数は少ないものの、解決が難しい相談内容として「第二創業(業態転換、新分野進出)」が挙げられる。

よろず支援拠点

○中小企業・小規模事業者が抱える経営課題を解決するため、国として、全国の「よろず支援拠点」に多様な経歴を持つ専門家を配置。相談者としては、製造業の割合が高い(29・5%)。

○他の支援機関とも連携しながら、個別の経営課題に適した解決方法を提供している。

人口との関係

○1741基礎自治体の人口増減と事業所増減率を見ると、小規模事業所の方が中・大規模事業所よりも人口の影響を受けやすい。

○自治体人口規模別に1000人当たりの事業所数で比較すると、自治体の人口規模に関わらず、人口に比例して一定数が存在(全国平均30事業所)。小規模事業者は人口に比例して存在し、地域の生活に密着した存在。

○人口1000人当たりの小規模事業所数で「郡部の町村」と「大都市部」の産業構造を比較すると、「情報通信業」や「専門技術サービス業」「卸売業」「不動産業」「医療・福祉」など数多くの業種で大都市部の方が多い。

○「郡部の町村」は、「建設業」「小売業」「生活関連サービス業(理美容や洗濯業)」など生活に密着した業種が多い。

地域における意義

○地域区分別に小規模事業所の開設時期を見ると、都市部から地方部に行くに従い、30年以上存続している事業所の割合が高くなっている。これは地方部に行くほど、息の長い事業活動を続けていることの表れである。

○地域区分別に企業規模別の売上高、給与総額および従業者数の構成割合を見ると、都市部から地方に行くほど小規模事業者の構成割合が高くなっている。「地方都市」や「郡部の町村」ほど、小規模事業者の地域経済に対する貢献度が高いものといえる。

第2部小規模事業者の未来

経営者の年齢別の分析

○経営者の年齢世代別に売上高の傾向や経営計画の作成状況を見ると、若い世代ほど業績傾向が良く、また、積極的な経営活動をして商圏も拡大傾向にある。

○売上高の実績では、経営者としてある程度経験を積んだ30代が最も高い。

○IT機器(情報通信機器)の保有割合は、どの世代も総じて高い。

○商圏は3代目、4代目と代を重ねるにつれ拡大傾向が顕著となり、5代目が最も高くなっている。これは長期間にわたり、消費者ニーズなどの変化に小規模事業者自身が改善や工夫などの対応をしてきたことで商圏拡大に結びつけている成果の表れといえる。

女性の就業環境

○女性活用のための取り組みについて、制度の整備面を見ると、中規模事業者に比して、小規模事業者の整備状況は総じて低い。

○就業先の企業規模を見ると、新卒時に比べて復職時では、規模の小さな事業者が選ばれている。出産・育児からの復職時の受入先として、小規模事業者の方が採用面でより柔軟に対応していることがうかがえる(図8)。

○正社員について従業者規模別の就業年数を見ると、従業者規模が1人から4人の規模の小さな事業所の方が就業年数が長い。小規模事業者の方が女性にとって長く勤められる雇用環境を有している。

フリーランスの実態や事業活動

○性別で見ると4分の3が男性、4分の1が女性。年齢では50代が最も多く、次いで40代、50代の順。

○営む事業として多い職種は、「デザイナー」(20・7%)、「システムコンサルタント・ソフトウェア作成」(17・7%)、「著述家](12・1%)などとなっている(図9)。

○年収は「100万円以上300万円未満」が35・2%、「300万円以上500万円未満」が24・9%、「500万円以上800万円未満」が13・2%の順となっている。

○働き方の満足度を見ると、「大変満足」「満足」とする回答の比率が高くなっているが、男女間で比較すると女性の方がより満足度が高い。

○今後の働き方の展望については、最も多い回答は「フリーランスのまま、事業(売り上げ・顧客など)を拡大したい」で39・2%、続いて「(中略)維持したい」が29・2%で、合わせて約7割を占めた。

第3部小規模事業者のたくましい取り組み(省略)

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