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元気が出る中小企業経営 母親の愛情が生んだ“お下がりネットワーク” ~ありそうでなかったリユース業とは?~

「今後は学校用品なども扱い、より利便性を高めていきたい」と語る馬場加奈子社長

今号は、一人の母親が立ち上げた〝ありそうでなかった〟事業が地元に受け入れられ、大きく花開いている事例をご紹介します。

身近なニーズが新事業に

香川県高松市に、「サンクラッド」という学生服と体操服のリユース会社があります。社長の馬場加奈子さんは、創業前は大同生命の営業職として活躍していました。

三児のシングルマザーでもある馬場さんは、子どもたちの卒業・入学のたびに、不要になった学生服を捨てることに抵抗を感じていました。ひと昔前の日本はご近所付き合いも活発で、〝お下がり〟を融通し合うのが一般的でした。しかし、近年の少子化や人間関係の希薄化で、お下がりが欲しくてもその機会がないことを実感した馬場さん。これを事業化しようと決意します。

馬場さんのアイデアは、着なくなった制服を買い取ってメンテナンスし、必要とする家族に販売するというものでした。事業経験はありませんでしたが、約2年の準備期間を経て、平成23年1月に学生服・体操服専門リユースショップ「さくらや」をオープンします。

この事業で大切にしたのは、〝母親の子どもに対する愛情〟です。「状態が良く、清潔なものを着せたい、というのは親の切なる思いです」と語る馬場さん。そのため、買い取った商品のコンディションには細心の注意を払いました。制服のクリーニングは外注業者、体操服の洗濯は提携している障がい者施設、刺しゅう取りは地域の高齢者団体に依頼するなど、外部ネットワークをうまく活用しました。

「母親たちの力に」各地へ広がる思い

また、馬場さんは接客にも重点を置きました。一人ひとりの顧客の気持ちに寄り添った対応を心掛けたのです。一方で、顧客のお母さん同士のネットワークも広がり、情報交換が活発化。このユニークなリユース業は、次第に口コミで地元に受け入れられていきました。

事業が軌道に乗っていく中で、馬場さんは「お下がりが必要な家庭は日本中にあるはず」と考えましたが、同社の経営資源だけでは解決できません。そこで着目したのがフランチャイズチェーンのシステム。同社が本部となって加盟店を募集し、独自の運営ノウハウを提供・支援するのです。こうして、平成26年3月、県内の宇多津市に1号店が誕生。今後もお下がりネットワークは各地で広がっていく見込みです。

経営者としての経験は全くなかった馬場さんですが、「同じニーズを抱える母親に役立つサービスを」との一念が突破口となりました。母親の切なる思いが一つのビジネスを生むという好事例です。

坂本 篤彦(さかもと・あつひこ) 昭和39年東京都生まれ。平成3年東京商工会議所に入所。退職後にビジネス・コア・コンサルティングを設立し、代表に就任。創業・ベンチャーの事業展開支援など、実践型のコンサルティングを行っている。また、中小企業大学校で教壇に立つ傍ら、北は北海道から南は沖縄まで、年間約200回の講演・セミナーを精力的にこなす。

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