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元気が出る中小企業経営 “飲めるみりん”でファンを獲得~たゆまぬ魅力づくりで商機をつかむ~

「常にお客さまの期待の先をいく店にしたい」とモットーを語る三代目の金子巌さん

今号は、立地条件は悪いながらも独自の存在価値を発揮している事例をご紹介します。

千葉県流山市にかごや商店という酒類・食料品の小売店があります。創業は昭和16年、背負う籠の製造販売を行っていたことが店名の由来です。旧流山街道沿いにあるものの、近隣の店舗も分散しており、商店街を形成するには至っていません。立地条件は厳しいものがあります。三代目の金子巌さんは家業に対する強い危機感がありました。昨今は昔ながらの〝御用聞き〟的な販売スタイルは敬遠され、安売り大型店が台頭しています。従来型の酒販店のままでは生き残れないという思いです。

解決のカギは「いかに顧客の〝継続性〟を喚起できるか」。そこで金子さんは大型店にはない対人販売を強化し、自店にしかない魅力を発揮して客を獲得。これにより、リピート客を増やしていく戦略を取りました。同店の〝一押し商品〟は白みりん。流山は江戸時代から水運交通の要衝で、みりんや醤油の産地でした。かごや商店は、地元の酒蔵と提携。江戸時代から続く製法による独自商品を販売することにしたのです。厳選した国産米を使用し、3~6カ月かけて自然ろ過するため、ふんわりとした麹の風味が楽しめます。添加物となる糖類は一切使用しないため、そのまま〝飲めるみりん〟として大手の量産品とは一線を画すことに成功しました。

また、この商品は贈答用に特化するのでなく、あえて〝日常用途〟で使ってほしいと、顧客が手を伸ばしやすくなる工夫もしています。みりんは720㎖入りが標準ですが、トライしやすいよう300㎖入りも投入。かさばらないため物産展などイベントでも気軽に買えるようになりました。製造コストも圧縮しています。瓶に貼るラベルを自家製にしたことなどで、それぞれ945円、530円と割安な価格を実現したのでした。

さらに製造過程で出る副産物も有効活用しています。例えば、みりんのしぼりかすは梅の花に似ていることから、古くから「こぼれ梅」と呼ばれています。これは糖分無添加の昔ながらの製法だから生じる食材です。なじみがないため、試し買いを喚起するためにパックを小分けにしました。みりん本来の香りと甘み、原料由来の粒感を楽しめると好評なため、贈答用パッケージも投入。幅広い顧客のニーズに応えています。

また「みりんは調味料にしか使えない」という固定観念を打破したいと、流山商工会議所が実施する「まちゼミ」にも参画。金子さんが講師となって地元の30~40代の主婦にみりんとこぼれ梅を使った杏仁豆腐のつくり方を伝授するなど、自社商品の幅広い使い方を紹介することで着実にファンを増やしています。

坂本 篤彦(さかもと・あつひこ) 昭和39年東京都生まれ。平成3年東京商工会議所に入所。退職後にビジネス・コア・コンサルティングを設立し、代表に就任。創業・ベンチャーの事業展開支援など、実践型のコンサルティングを行っている。また、中小企業大学校で教壇に立つ傍ら、北は北海道から南は沖縄まで、年間約200回の講演・セミナーを精力的にこなす。

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