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元気が出る中小企業経営 独自の“進化”を続ける老舗クリーニング業 ~顧客の利便性追求で商機をつかむ!~

「これからも顧客志向でビジネスモデルを進化させていきたい」と抱負を語る長谷川幸則社長

今号は、業界の常識に縛られず、顧客本位の視点で新サービスを導入し、業容を拡大させている事例をご紹介します。

ネットによる宅配事業で若年層の顧客開拓に成功

大阪府岸和田市に「フランス屋本部」というクリーニングチェーンがあります。昭和47年の創業で、関西を中心に約300店を展開しています。二代目社長の長谷川幸則さんは、かつて、自社の将来に危機感を持っていました。本格的な人口減少に加え、家庭用洗濯機の性能アップや形状記憶シャツの普及など、クリーニング業界への逆風が強まっていたからです。同時に、同社が長年培ってきた独自のしみ抜き技術を、もっと多くの顧客に利用してほしいというジレンマも抱えていた長谷川さんは、新たなサービスを模索し始めます。

まず着目したのは、「インターネットによるクリーニングの宅配事業」でした。これは、顧客がネットで注文した専用収納袋に洗濯物を詰めて、同社へ送ると、直営工場でクリーニング加工し送り返してくれるというサービスで、配送には宅配便を利用します。袋は3サイズ(各5・10・15点の収納が可能)あり、ダウンなどの特殊素材でも追加料金は不要。配送料は同社が負担しますが、通常の取次店を介さずに顧客と直接取引できることから採算性を確保しています。

この宅配事業は平成22年にスタートし、商圏は全国へと拡大。従来の主要顧客は50~60代の女性でしたが、宅配により幅広い年代からの受注を獲得しました。特に、スマートフォンからの申し込みが4割を占め、課題であった若年層の顧客開拓に成果を挙げています。

時代の変化を捉え新サービスを展開

次に着手したのは「完全無人化店舗の導入」でした。ヒントになったのは、大規模タワーマンションの住民専用のクリーニングボックス。同社の無人店舗に設置された〝受付ボックス〟に顧客が洗濯物を入れておくと、後日、仕上がり品が同店舗の〝お渡しボックス〟に届けられます。24時間対応で、顧客が生活スタイルに合わせて利用できる点が魅力です。無人のため、導入に当たっては〝分かりやすさ〟を追求し、価格はシンプルに150円と350円の2プライス制、初めての利用客でも受付機の画面表示に従えば簡単に操作できるよう配慮しました。現在は大阪府内の2店のみですが、今後は立地条件に応じて徐々に展開していく意向です。

クリーニングという成熟型の事業でも、業界の常識に縛られない柔軟な発想と顧客の利便性を追求する姿勢があれば、将来の新たな展望は開けるという好事例です。

坂本 篤彦(さかもと・あつひこ) 昭和39年東京都生まれ。平成3年東京商工会議所に入所。退職後にビジネス・コア・コンサルティングを設立し、代表に就任。創業・ベンチャーの事業展開支援など、実践型のコンサルティングを行っている。また、中小企業大学校で教壇に立つ傍ら、北は北海道から南は沖縄まで、年間約200回の講演・セミナーを精力的にこなす。

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