日本商工会議所はこのほど、中小企業における若者・女性の活躍推進を支援するため、日商ホームページ内にポータルサイトを開設した。同サイトでは、若者の就労支援を目的とした「就職情報」、婚活イベントや街コンの開催といった若者の出会いを応援するための「婚活情報」など、各地商工会議所が実施する各種事業を随時発信。先進的な中小企業の事例を「光る!リーダーシップ!」と題して発信していく。
今回は、「若者・女性の活躍推進企業」の第1弾としてヱビナ電化工業株式会社(東京都大田区)の取り組みを紹介する。 東京都大田区でめっき加工・技術開発事業を展開するヱビナ電化工業株式会社。代表取締役社長の海老名さんは、世界と技術を競う優秀な人材の採用・育成・定着に取り組み、実績を挙げている。取り組み開始から15年余り、社内は女性技術者・研究者の活躍にあふれている。
きっかけはCI活動
2000年、同社は世界と技術を競える研究開発型企業に生まれ変わることを目指し、優秀な人材の確保に向け、CI活動を開始した。めっき業界という、いわゆる3K職場のイメージを払拭し、男女問わず優秀な人材を呼び込もうという戦略だ。
工場・社屋を近代的なイメージに変え、談話室・トイレを改装したほか、学生向けに会社案内のDVDを作成。また、研究所棟を設置し、研究開発型企業として強くPRを行った。
取り組みを展開するうち、優秀で活気ある女子学生からの応募が急増。企業イメージを一新させる取り組みは、女性に馴染みのないめっき業界に、世界と技術を競う優秀な女性技術者・研究者を呼び込むこととなった。
半数が女性社員
現在、社員の約半数が女性であり、開発部も10人のうち8人が女性研究者、課長職も女性が務めている。女性は時間の使い方が上手く、女性社員の増加は業務の効率化を促進させることにもつながった。同社では、大学の研究室と連携して、社員に対し大学院での研究研修制度も実施。約半年間、大学院でめっき加工に関する研究に携わる機会がある。「学び」の場の提供は、社員のスキルアップ・意識高揚を図り、主体的な働きを促すことにつながっている。
これまでに3人の女性研究者が参加したが、研修を終えて戻った社員の顔付きは大きく変わった。自信とやる気に満ちあふれるだけでなく、新たなインスピレーションを得て、産学連携で新製品を開発する契機にもなった。
同社ではこのほか、社内英語研修やめっき加工に関する研修を随時実施し、男女問わず、意欲ある社員に対しては積極的に「学び」の場を提供している
出産・育児も充実支援
女性社員の増加に伴い、事業所内保育所を導入しようと試みた時期もあったが、社員から子供を連れた通勤は困難との意見が多く出され、社内制度などの整備・充実に方針を変えた。26年度は、短時間正社員制度や託児所に子供を預ける際の補助制度の設置を検討している。
「優秀な女性研究者には、出産・育児を経ても仕事を続けてほしい。休むことを促進するのではなく、キャリアを意識し、仕事を続けていくこと、女性に多くの選択肢を提供することを考えていきたい」と海老名社長は語る。
社員が主体的に動ける会社へ
近年は、各部署に部署を統括する管理職を置き、社員の声をより広く取り入れることができるよう気を配るとともに、中期計画を作成してPDCAをしっかりと回し、事業を展開している。男女さまざまな社員が在籍する強みを活かし、皆で意見を出し合い、優秀な人材が長く活躍できる会社、社員が「主体的に動ける会社」を目指す。
【企業データ】
代表者=代表取締役社長 海老名伸哉
会社設立年=1946年
従業員数=100人(うち女性50人)
本社所在地=東京都大田区
事業内容=各種素材の電気めっきおよび無電解めっき加工、新素材へのめっき技術開発・試作など
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