量を減らし質を高める
ドイツの人口は2002年をピークにゆるやかに減少傾向にあり、すでに長期にわたり大幅な人口減少に悩まされている都市も多く存在する。人口は都市内でも特に人気のない地区から減っていくが、その不人気地域のひとつが都市郊外につくられた住宅団地だ。特に、旧東独地域においては、「プラッテンバウ」と呼ばれる画一的なプレハブ構造(プレート建築)で建設された大規模住宅団地の老朽化と空洞化が大きな問題となっている。
フランクフルト・アン・デア・オーダー市は、ベルリンから鉄道で約1時間、ポーランドと国境を接する人口約6万の都市。ドイツを代表する大都市のひとつであるフランクフルト・アム・マイン市(通称フランクフルト)とは別のまちだ。
フランクフルト・オーダー市は、1990年には約8万6000だった人口が2010年には約6万と、20年で約30%減少した。市内でも特に人口減少が著しいのは1970年代後半に建設された大規模住宅団地のノイベレジンヒェン地区。この地区の人口はピーク時には約2万4000人だったが、現在はわずか6000人。老朽化に伴う管理修繕費と空き家の増加や失業者・外国人などの流入増加による治安悪化など、多くの問題を抱えている。
そこで、市では、団地の規模を適正なものとし、さらなる住民の流出を抑制するため、連邦政府の補助金などを活用した都市の再構築(都市改造)を行っている。この事業の特徴は、建て替えではなく計画的な取り壊しとリニューアルに重点を置いている点だ。住民にはリニューアルした住棟・住戸に移ってもらい、建物の跡地は緑化するなどして、居住環境の向上と総戸数の削減を進めている。
このような事業は旧東独地域各地で行われている。その先行事例ともいえるのが、ライネフェルデ=ヴォアビス市(人口約2万)南部にある住宅団地。ここでは、取り壊しや減築(部分的な取り壊し)を行った上で、内外装の大幅なリニューアルを施している。また、既存住宅団地の縮減とあわせて、隣接する地域に新たに戸建て住宅団地を建設するなど、「量」から「質」への転換が図られている。
インフラも適正規模に
旧西独地域においても、郊外住宅団地の再生は大きな課題だ。ルール地方に位置するドルステン市のバルケンベアク地区は当初6万人の入居を想定して計画された住宅団地だが、その後3万人規模の計画に縮小され、現在は約8000人が暮らす。団地内の商店街は空き店舗が連なり、ほとんど人の気配がない。ここでも、住戸数の削減とリニューアルがあわせて行われている。また、団地内の周回道路は当初の計画に基づき4車線(片側2車線)で整備されたが、これを2車線に減らし、使用しなくなった部分の緑化も進められている。除却・再整備費がかかるが、使わなくなった土地・建物をそのまま放置しないことが重要だ。 しかし、通常の開発行為と異なりこれらの事業費を回収することは難しい。連邦・州レベルでの支援が不可欠だ。
遠藤俊太郎/カッセル大学(ドイツ)
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