1990年代後半からわが国が取り組んできた中心市街地活性化は、目立った成果を上げていないことから、先ごろ、「中心市街地の活性化に関する法律」(以下、中活法)の改正が行われ、同時に「中心市街地の活性化を図るための基本的な方針」(以下、基本方針)に重要な変更が加えられた。また、これとほぼ同時期に国交省所管の都市再生特別措置法の大幅な改正が行われた。
これらの改正の主な目的は、コンパクトシティの実現である。わが国が直面するさまざまな課題を解決するためには、コンパクトシティ化は不可欠であり、その重要な手段として中心市街地活性化を行おうとする政策意図が明確に示された。
筆者は産業構造審議会委員として、また内閣府の中心市街地活性化評価・調査委員会委員長および中心市街地活性化推進委員会委員長として、これらの改正に関わってきたので、法改正の意義、その背景、コンパクトシティ化の本当の意味、先進事例である海外の取り組みについて、これから5回の連載で明らかにしていきたい。
中活法の改正
中心市街地活性化を図る経済効果の高い民間プロジェクトを重点的に支援する中活法改正の目的は、民間投資の喚起を通じた中心市街地活性化による「コンパクトシティ」の実現である。改正の主な項目は以下の通りである。
民間投資を喚起する新たな重点支援制度として、中心市街地への小売業の売上高などを相当程度増加させるなどの効果が高い民間プロジェクトを「特定民間中心市街地経済活力向上事業」に指定して、経済産業大臣が認定する制度を創設した。認定を受けたプロジェクトに対しては、さまざまな支援が受けられる。
このような法律上の支援策と合わせて、認定された民間事業者を直接支援する補助金の交付などが実施されることとなった。
次に、中心市街地活性化を図る措置の拡充として、小売業の顧客の増加や小売事業者の経営効率化を支援するソフト事業を「民間中心市街地商業活性化事業」として経済産業大臣が認定する制度を創設した。また、認定を受けた基本計画に対し、オープンカフェなどの設置に際しての道路占用の許可の特例を創設し、それぞれの中心市街地に限って活動が認められる特例通訳案内士制度を創設した。
基本方針の変更
このような法改正に合わせて基本方針に重要な変更が加えられた。まず、裾野を拡大するために、中活基本計画の内閣総理大臣認定の要件が緩和され、合理的な理由の記載があれば、市街地整備、都市福利施設整備、居住環境向上、経済活力向上の4事項に、それぞれ新たな事業などを記載する必要が無いことが定められた。
中心市街地の柔軟な区域設定に関しては、同一の市町村内であっても、地域の実情により中心市街地とすべき地域が複数存在する場合は、複数の地域を一体の区域とみなすことができるようになった。また、当該市町村が周辺市町村と密接な関係を持っており、複数の市町村で連携して活性化を図る場合には、一体的に支援することとなった。
法改正の目玉である「特定民間中心市街地経済活力向上事業」の経済産業大臣認定に際しての要件は、年間来訪者数などで測定された経済効果が十分に見込まれるプロジェクトであることが条件である。また、周辺地域の経済活力を向上させる波及効果も求められる。
さらに、地元住民や市町村の強いコミットメント、地権者および中活協議会の同意、都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画との適合、が要件となっている(立地適正化計画については次回で詳説する)。実効性を高める取り組みの一つとして、都道府県には大規模集客施設の立地について適切な誘導を行うことが求められている。
横森豊雄・関東学院大学教授