山梨県の全27市町村をホームタウンとするヴァンフォーレ甲府。ホームゲームでは「ホームタウンサンクスデー」を開催し、さまざまなイベントを実施しているほか、病院や施設の訪問、スポーツ教室、介護予防事業といった地域活動にも力を入れている。こうした活動は年々増加し、年間200回を超えるまでになった。
地元の魅力をスタジアムでPR
ホームゲームで、試合ごとに市町村を割り振り開催している「ホームタウンサンクスデー」。住民を招待するほか、地域の伝統芸能を披露してもらう場を設けている。 「試合の開始前に、伝統芸能やダンスなどのパフォーマンスを披露してもらっています。スタジアムへの来場者数が年々増加していることもあり、地元の魅力をたくさんの人にPRできると好意的に受け入れてもらっています」と話すのは、運営部の植松史敏さん。「毎試合、スタジアムに全市町村の旗を掲揚し、クラブと一緒に戦うという気持ちを表していますが、アウェイチームのサポーターは驚かれますね」。
スタジアム周辺では、屋台やブースで対象市町村の特産品を販売。さらに、サクランボや桃、ブドウといった地域産品を来場者にプレゼントしたり、観光パンフレットを配布したりしているが、アウェイサポーターにもプレゼントしているのが特徴だ。 「観戦をきっかけに、その地域の魅力を知ってもらい、次は観光で山梨県に来てもらえればと考えています」(植松さん)
選手が田植えを経験
地域交流活動も積極的に取り組んでいる。食育・体育・知育・徳育の活動を総称して名付けたプログラム「ヴァンタス実育山梨」はクラブのスポンサー企業、ホームタウンと協力して展開している。
その一つの食育活動は、はくばくグループ、山梨県米穀株式会社との共同の取り組みだ。子どもたちに食事の大切さを伝え、お米をたくさん食べてきちんとした食生活を送ってもらおうと、「あしたのヒカリ」というお米を企画。選手も田植えに参加し、農作物をつくる大変さを体験している。 「初めて経験する田植えに、お子さんと一緒に参加する選手もいます。スクール生には、大会後に県外の相手チームの子どもたちと一緒に農業体験をしてもらっています」(同部の小野博信さん)
子どもたちに元気や勇気を与える
ホームタウンの小学校や幼稚園、保育園のほかに、支援学校や病院も訪問している。 支援学校には監督・コーチ・全選手が訪れ、知的障害などハンディキャップを背負う子どもたちに体を動かすことの楽しさを伝える交流会を開催。その一部は若手選手が企画し、PK対決や、ドリブルをしたり子どもをおんぶしたりしてリレーをするなど、一緒に体を動かしている。
また、病気で入院している子どもに元気や勇気を与えようと地元の病院を訪れ、リフティングなどプロの技術を披露したり、交流会で選手への質問コーナーを設けたりしている。さらに、病室から出ることができない子どもたちのために選手やマスコットのヴァンくんが部屋を訪問。ヴァンフォーレグッズをプレゼントするなど交流を深めている。 「子どもたちがうれしそうにしてくれるだけでなく、入院生活を支えているご家族や看護師の皆さんも喜んでくれます」(植松さん)
こうした活動は地元の新聞やテレビ番組で紹介される機会も多く、クラブの存在が県民に浸透している。Jリーグが毎年実施する「Jリーグ観戦者調査」では、「どうして観戦に来ましたか?」という質問に「チームが地域に貢献しているから」と答えた人がJ1・J2全チームの中で5年連続トップになった。
これからもヴァンフォーレは「ホームタウンの生活に深く根差した、地域に新しい喜びをもたらすクラブ」を理念に、地元に密着した活動を続けていく。
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