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新型コロナウイルス感染症対策で活用できる税制措置 <集中連載> 第3回 消費税の課税選択の変更に係る特例、その他さまざまな特例措置など

執筆・監修 城所 弘明(きどころ・ひろあき)

公認会計士・税理士・行政書士/日本商工会議所「税制専門委員会」学識委員

本誌では、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」における「税制措置」の重要なポイントを「“集中”連載」として8月号〜10月号まで3回に分けて掲載しています。最終回となる第3回は「消費税の課税選択の変更に係る特例」などを分かりやすく解説していきます。

(注)「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」等

コロナ対策で活用できる【優遇税制】

東京商工会議所のHPで城所先生の解説動画(1〜5)が見られます。

動画はこちら

Point 1 消費税の課税選択の変更に係る特例などが活用できます

売り上げが著しく減少した事業者において、課税期間中であっても、課税選択をやめる(免税事業者に戻る)ことなどが可能となる特例ができました。なお、免税事業者に戻れるのは、その課税期間の基準期間(法人は前々事業年度、個人事業者は前々年)における課税売上が1,000万円以下の事業者などです。

【現行制度と特例との比較】

項目:課税選択

現行の課税選択の変更制度

課税事業者選択届出書または課税事業者選択不適用届出書は、その課税期間の開始前に届け出を行う必要があります。

特例

税務署に申請し承認を受けることで、課税期間の開始後であっても消費税の課税事業者を選択またはやめることができます。

項目:継続適用

現行の課税選択の変更制度

消費税の課税選択を行った場合には、2年間の継続適用が必要です(翌課税期間に適用を取り止めることはできません)。

特例

本特例の適用を受けて課税事業者を選択する場合、課税事業者を2年間継続する必要はありません。

【特例適用の要件】

項目:課税期間

要件の内容

法律施行日(本年4月30日)以後に申告期限が到来する課税期間に適用されます。

項目:売上減少割合

要件の内容

新型コロナウイルス感染症の影響により、本年2月1日から2021年1月31日までの期間のうちの一定期間(1カ月以上の任意の期間)の収入が、前年同月比概ね50%以上減少した場合に適用されます。

項目:申請書の提出

要件の内容

当該課税期間の申告期限までに、税務署に申請し承認を受ける必要があります。

【課税事業者の選択をやめる場合の具体的な適用事例】

・当初、2020年9月期について課税事業者を選択していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、20年3月1日から31日の1カ月間において、事業としての収入が著しく減少したため、20年9月期から課税事業者の選択をやめて免税事業者となる場合(9月末決算法人の場合)

(注)免税事業者になることができるのは、その課税期間の基準期間における課税売上が1,000万円以下の事業者などです。

【簡易課税制度の適用に関する特例】

・消費税の簡易課税制度の適用に関しては、消費税法第37条の2において、「災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例」が設けられています。

・新型コロナウイルス感染症の影響による被害を受けたことで簡易課税制度の適用を受ける(またはやめる)必要が生じた場合、税務署長の承認を受けることにより、その被害を受けた課税期間から、簡易課税制度の適用を受ける(またはやめる)ことができます。

Point 2 テレワーク導入支援のため、設備投資減税が拡充されます

現行の「中小企業経営強化税制」において対象範囲が拡大され、新たにテレワークなどの導入のための設備投資も新類型(C類型)となりました。

【中小企業経営強化税制の要件】

項目:制度の概要

要件の内容

中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づく設備投資に対して、即時償却または税額控除10%(または7%)を選択適用できる制度です。

項目:A類型(現行制度)

要件の内容

生産性向上設備

生産性が年平均1%以上向上改善する設備

項目:B類型(現行制度)

要件の内容

収益力強化設備

投資利益率5%以上の投資計画に係る設備

項目:C類型

要件の内容

デジタル化設備(遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当する設備)が対象となります。

◆機械装置(160万円以上)

◆建物附属設備(60万円以上)

◆工具(30万円以上)

◆ソフトウェア(70万円以上)

◆器具備品(30万円以上)

【C類型対象設備の要件】

項目:遠隔操作

要件の内容

①デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること

②以下のいずれかを目的とすること

・事業を非対面で行うことができるようにすること

・事業に従事する者が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにすること

項目:可視化

要件の内容

①データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと

②①のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること

③①により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化(※)を行うことができるようにすること

項目:自動制御化

要件の内容

①デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること

②①の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等を最適化するためのものであること

※設備、技術、個人の有する知識および技能等を含む事業活動に活用される資源等の最適な配分等

【デジタル化設備(C類型)に係る手続きの流れ】

出典:中小企業庁「デジタル化設備(C類型)に係る経産局確認の取得に関する手引き」

Point 3 さまざまな特例措置が活用できます

(1)チケット代金払い戻しの放棄によって、寄附金控除が受けられます

文化芸術・スポーツイベントの中止などに伴い、観客がチケット代金などの払い戻しを求めなかった場合、その金額は寄附とみなされ、寄附金控除の対象となります。

【寄附金控除の適用までの流れ】

出典:日本商工会議所「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」における税制措置のポイント

(2)特別貸付に係る印紙税が非課税となります

公的機関や民間金融機関などが、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に対して行う特別貸付に係る契約書については、印紙税が非課税になります。

出典:日本商工会議所「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」における税制措置のポイント

(3)住宅ローン控除の適用要件が弾力化されます

新型コロナウイルス感染症の影響による住宅建設の遅延などにより、本年12月31日までに居住の用に供することができなかった場合などについても、一定の要件を満たすときは、期限内に居住の用に供したものと同様の住宅ローン控除が受けられるようになります。

(4)市町村または特別区から給付される一定の給付金が非課税となります

市町村または特別区からの給付金で次に掲げるものについては所得税が課税されません。

1.新型コロナウイルス感染症およびそのまん延防止のための措置で、家計への支援の観点から給付される一定の給付金

2.新型コロナウイルス感染症およびそのまん延防止のための措置で、児童の属する世帯への経済的な影響の緩和の観点から給付される一定の給付金

(注)各都道府県で設定する「感染拡大防止協力金(各都道府県により名称が異なる場合があります)」については、所得税・法人税の計算上、収入金額(益金)になります。

*本記事は、「会議所ニュース/発行:日本商工会議所」(2020年6月21日号)に掲載された記事の一部を変更して新たに構成しています。

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