日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2020年11月11日号 宇津井輝史

日本の避難所が劣悪なのはつとに指摘されてきた。間仕切りや段ボールベッドなど、密の回避はコロナ禍でずいぶん改善されてきた。とはいえ関東大震災以来の「体育館で雑魚寝」スタイルが依然常態化している。避難所暮らしなど誰も望まないが、自然災害が多発する国で生きる以上、明日は我が身である。

▼まずはプライバシーの問題である。災害救助法に基づく政府のガイドラインによれば、一人当たり占有面積は1・65㎡。まるで「起きて半畳、寝て1畳(1・6㎡)」のことわざに準拠したかのようだ。国際的に権威あるスフィアプロジェクトは、尊厳ある生活への権利、人道支援を受ける権利、保護と安全への権利の3原則に基づいて最低3・5㎡と定める。

▼次に人権。被災者は何の落ち度もないのに「申し訳ない」という気持ちになりがちだ。だが避難所は決して我慢して過ごすところではあるまい。被災者には人権があるとの思想を背景に、イタリアでは日常の生活水準を維持できるよう、世帯ごとに1テント。温かい食事を提供するキッチンカー、シャワー室なども完備される。この違いは何か。

▼災害救助法は避難生活を7日間と想定する。少々質の低い生活は我慢の範囲というわけである。米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)のように、イタリアも国の機関がリーダーシップをとる。日本の避難所運営は自治体任せである。地域ごとに避難所格差が生じるのはやむを得ない。

▼冬に向け、コロナウイルスは依然予断を許さない。万一災害が発生した場合、避難所での感染リスクも懸念される。ソーシャルディスタンスはむろん、人権とプライバシーに配慮した避難所の運営基準が改めて求められる。

(コラムニスト・宇津井輝史)

次の記事

東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗

2015年に創設された「日本遺産」は、今年6月、新たに21件が認定、合計104件となり、当初予定の認定数に達した。今後は新たな認定は行わないが、そのさらなる磨き上げに力を入れ…

前の記事

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

米国社会の分断を広げたトランプ大統領。11月3日の大統領選挙で再選されれば、分断はさらに深刻なものとなる。だが、民主党のバイデン候補が勝利したとしても、この分断を修復…

関連記事

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

新型コロナウイルス感染症に翻弄(ほんろう)された昨年は、政治家のリーダーシップの価値を痛感した一年だった。緊急時には、リーダーの采配一つに住民の命がかかる。国や大都市…

コラムニスト 宇津井輝史/NIRA総合研究開発機構理事・研究調査部長 神田玲子/東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗/時事総合研究所客員研究員 中村恒夫/政治経済社会研究所代表 中山文麿

コロナ禍の中迎えた2021年。コラム「石垣」執筆者5人に、今年の展望や日本、そして世界の行方について聞いた。地政学の祖マッキンダーはユーラシア大陸を世界島と呼んだ。歴史…

政治経済社会研究所代表 中山文麿

今回の米国大統領選挙は、トランプ氏を絶対に再選させたくない民主党と熱狂的な支持者からなるトランプ党との戦いだった。トランプ支持者は戸別訪問などどぶ板選挙も行い、前回…