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コラム石垣 2020年11月1日号 神田玲子

米国社会の分断を広げたトランプ大統領。11月3日の大統領選挙で再選されれば、分断はさらに深刻なものとなる。だが、民主党のバイデン候補が勝利したとしても、この分断を修復することは容易ではない。前回の大統領選挙でトランプ候補を支持した、ラストベルトの人々。そして、民主党の候補者選びでサンダース候補を支持した若者たち―。政治から見放されたと感じている中間層や若者らをどうすれば、政治は包摂することができるのだろうか。その答えはいまだ出されていない。

▼政策を議論する際に基本としてきた三つの対立軸―「保守対革新」「大きな政府対小さな政府」「市場重視対公平重視」―は、もはや有権者を引き付ける有効なツールには成り得ない。特に、この層の人々にとっては、自分たちの生活の見通しが立つのか、将来の夢を追求できるかどうかなどという、目前の課題が重要な関心事だ。また、政府の規模ではなく、国民のニーズに政府が応えてくれるかどうかを見定めたいと思っている。さらに、米国が個人の自由や多様性を尊重する社会になっていくかどうかが、より重要な尺度であるはずだ。

▼政治に置き去りにされたと受け止めている人々が、魅力的で納得する政策を提示することができなければ、社会の分断は進む。かといって、場当たり的な対応を行ってはならない。各政党は、人々の意識を「政策の座標軸」で表し、その上で政策を体系的に指し示すことで、人々の理解と支持を得ることが期待されている。これまでの三つの対立軸に替えて、新たな「政策の座標軸」を基に、政策の体系的な議論を深めることができるかどうかが、米国社会の行方を左右するだろう。

(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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