パラリンピックのチカラ File 15 夢舞台を見据える43歳は家族や職場の応援を力に進化しつづける

西崎 哲男 (にしざき・てつお)

1977年4月26日奈良県生まれ。乃村工藝社所属。

男子49㎏級(138㎏)、同54㎏級(143㎏)日本記録(カッコ内)保持者

「READY STEADY TOKYO-パワーリフティング」で力強い試技を見せる西崎哲男選手 撮影:吉村もと

パラリンピックのパワーリフティングは、下肢に障がいのある選手が上半身の力だけで行うベンチプレス競技だ。健常者よりも障がい者の方が高い記録が出ることもある奥深い競技性にも魅せられ、東京パラリンピック出場を目指すのが西崎哲男だ。

小・中学校時代は野球、高校ではレスリング部で活躍したが、23歳だった2001年春、交通事故に遭う。九死に一生を得るも脊髄を損傷し、車いす生活を宣告される。‶未来が見えない不安〟から10日間泣き続けた。

支えたのは結婚して1年半の妻。優しさに救われ、辛い現実も徐々に受け入れられた。リハビリも兼ねて始めた車いす陸上で自信も取り戻した。本気で取り組んだ結果、06年には400mで世界選手権に出場。08年の北京パラリンピックにはあと一歩届かず、次を目指していた11年、待望の娘を授かる。「家族との時間を優先したい」とすっぱり引退した。

転機は13年秋。東京大会の開催が決定したことを知り、競技への思いが再燃した。「娘に戦う姿を見せたい」とリハビリや車いす陸上の練習で経験したパワーリフティングで、現役に復帰。1年後には競技環境の充実を求め転職もした。練習場の整備など現所属先の後押しもあり、リオパラリンピックに初出場が叶(かな)った。しかし、念願の大舞台で‶自分を見失った〟西崎は、3回の試技を全て失敗してしまう。記録なしに終わった。

その悔しさをバネに、練習を重ねた。昨年9月には東京大会への可能性を広げようと減量に挑み、54㎏級から49㎏級に下げた。必死に強化を進めていた中、コロナ禍で大会は延期されたが、「妥当な判断。1年後には確実にもっと強くなれる」。チャンスだと受け止めた。

自宅での練習を強いられる期間も長かったが、9歳となり体重約25㎏の娘を重り代わりにするなど工夫した。そんな練習が実を結び、約8カ月ぶりに臨んだ10月の国内大会で自身の日本記録を2・5㎏更新。着実に世界との差も縮めている。来年6月27日時点の世界ランキングで8位以内なら東京大会出場が内定する。

「来年の開催を信じて日々トレーニングをしていきたい。出場できたら応援してくださる方々と感動を分かち合えるよう、頑張りたいです」

 

パワーリフティング

鍛え上げた上半身による力比べ。“3秒”にかける集中力と気迫にも注目!

ベンチ台に仰向けで下半身を固定し、上半身の力だけでバーベルを押し上げる。一人3回の試技で成功した最大の重量で競う。障がいの程度によるクラス分けはなく、体重別に男女各10階級に分かれる。胸での静止は十分か、バーは水平かなどが厳しく判定される。1回わずか3秒の試技に向け集中力を高める、選手それぞれのルーティンも見どころだ。

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/powerlifting/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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