日本商工会議所の三村明夫会頭は1月21日、2021年初となる定例の記者会見に臨んだ。
新型コロナウイルスワクチン接種については、「コロナウイルスをコントロール下に置くためには、感染拡大防止に向けたこれまでの知見を最大限活用してワクチン接種を進めること、さらに、効果の高い治療薬の開発を進めることだ。コロナウイルスをインフルエンザウイルス並みに扱うことができればアフターコロナ状態となる」と指摘。「今夏のオリンピック・パラリンピックはぜひとも開催してほしいが、アフターコロナに至ることが開催の重要な条件になってくる」と、ワクチンが一定の効果を上げることで国民の不安も解消されるとの認識を示した。日本でもいち早くワクチンが承認されること、十分な量の確保、配布のロジスティクスの確立、遅滞なく対象者に2回接種されることに期待を寄せた。
2020年貿易統計については、「輸出は落ち込んでいるといわれているが、自動車を中心とした製造業の輸出は、落ち込み方が非常に少ない。これは中国向けの輸出が急回復していることもある。20年通年の輸出は、思いがけず大幅な落ち込みを免れたと見ることもできる。今後、米国向けの輸出が政策パッケージで活性化すれば、製造業の輸出のリカバリーは早いのではないか」との見方を示した。その上で、「日本経済の活性化のキーは国内の個人消費」と強調。「GDPの55%程度を占める個人消費の、とりわけサービス産業がどういう形で、いつリカバリーするのか。これはコロナの克服時期や消費者の将来不安にも関係する重要な点。今後は、国内消費の復活が最大の問題になる」と話した。
雇用調整助成金については、「前回と今回の緊急事態宣言で企業の財務面を比べてみると、事業への影響は今回も前回と同じくらい、例えば売り上げが半分ぐらいに減ってしまったのだが、借入金は大幅に増えている。借金を続けながら事業を継続するのか、それともこの際廃業してしまうのかで悩んでいる企業が相当増えているのが今の状況だと思う」と述べた。「何とか企業は雇用を守ろうと頑張っているが、それに雇用調整助成金が大きな役割を果たしている。今回の緊急事態宣言は2月7日までということだが、報道のとおり3月末まで雇用調整助成金の特例措置が延長されるのであれば、状況によってはさらなる延長をお願いすることもあり得る」と表明。一方、雇用調整助成金の給付がさらに増えると財源不足が懸念されることから、国費による補填(ほてん)の検討を求めた。
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