あの人を訪ねたい 吉沢 亮

「栄一の考え方は、小さいころも大人になってもずっと同じというのがかっこいい。演じていて学ぶことだらけです」

漫画から飛び出してきたような端正な顔立ちから、「国宝級イケメン」とも称される吉沢亮さん。小説や漫画を実写化したドラマや映画など数々の作品に出演し、着実に俳優のキャリアを積んできた。そして今年、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主演に抜擢され、東京商工会議所の生みの親でもある渋沢栄一を演じる。

デビュー後しばらくは役者の仕事が好きになれずにいた

今年60作目となるNHKの大河ドラマ「青天を衝け」は、500以上の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった日本資本主義の父・渋沢栄一の生涯と、幕末から明治の激動の時代を描く作品である。その主演を務めるのは、近年、人気、実力ともに成長著しい吉沢亮さんだ。

吉沢さんが芸能界に入ったのは、母親が応募した「アミューズ全国オーディション2009 THE PUSH!マン」で、応募者3万1514人の中から「審査員特別賞」を受賞したことがきっかけだ。その後、高校を舞台とした青春群像劇「サイン」でドラマデビューを果たし、「仮面ライダーフォーゼ」への出演で注目を集め、活躍の場を広げていく。しかし、本人の弁によれば、「もともと強い憧れがあって芸能界に入ったわけではなく、しばらくこの仕事が好きになれずにいた」のだとか。そんな吉沢さんに転機をもたらしたのが「ぶっせん」という作品だ。

「19歳のとき初めて主演を務めた舞台ですが、出演者の中で僕が最年少だったんです。現場はうまくまとめられないし、客席も埋められず、初めて悔しさを感じて。そこから火が付いたというか、もっと役者という仕事に真剣に向き合おうと思いました」

それからの吉沢さんはさまざまなジャンルのドラマや映画に出演し、正統派の二枚目役だけでなく、暗くてクセのある役やどこか残念な三枚目なども多く演じながら、着実に力を付けていく。

意外な一面を持っていることが役柄をつかむ基盤に

女性向けファッション雑誌『ViVi』(講談社)が実施している「国宝級イケメンランキング」で1位を獲得し、殿堂入り。そのルックスに目がいきがちだが、人となりはどうなのだろうか。

プロフィールによれば、特技は剣道。小学1年生から9年間、近くの道場で練習を重ね、2段の腕前を持つ。関東大会で優秀選手に選ばれたこともあるそうだ。実は硬派なタイプと思いきや、「中学生のころは目立ちたくて仕方がなかった」のだとか。

「あの当時、剣道はダサいと思っていて。部活はバスケット部に入っていました。とにかく目立ちたくて、モテたくて、学校行事や学園祭などでは応援団を買って出たりしていました」と予想外のエピソードを披露し、「(そんなことをしなくても)モテたでしょう?」と突っ込むと、「中学時代はモテました」とはにかんだ。

一方、自らの性格を人見知りとも公言しており、高校時代は友だちが少なく、同級生の‶リア充〟を冷めた目で見ていたことを他誌のインタビューで打ち明けている。そんな意外な一面も持ち合わせていることが、幅広い役柄を的確につかんで演じ分ける基盤となっているのかもしれない。例えば、映画「リバーズ・エッジ」では、同級生からいじめを受けながら、どこかそれを達観しているような独特の雰囲気を持っているゲイの青年、中国の春秋戦国時代の秦を舞台にした「キングダム」では、のちの始皇帝となる秦王と戦争孤児の少年、「斉木楠雄のψ難(さいなん)」では中二病真っ最中の高校生などがその代表例といえる。

これらを含めた出演作には小説や漫画を実写化したものが多く、作品の世界観や登場人物のイメージをいかに再現するかが大きなカギとなる。それだけに吉沢さんの演技力が問われ、キャラクタービジュアルは原作ファンからも支持を受けている。特に「キングダム」では一人二役の演技が高く評価され、第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した。

渋沢栄一の‶かわいらしさ〟を見る人に伝えたい

若き演技派俳優として今熱い視線が注がれている吉沢さんが、今年1年を通じて登場するのが、渋沢栄一の生涯を描いたNHK大河ドラマ「青天を衝け」だ。主演が決まったときは、とっさに「僕でいいの?」と思ったそうだ。

「恥ずかしいんですが、この話をいただくまでは(新しい)『お札の人』くらいの印象しかなかったんです。自分で調べてみたら、めちゃくちゃすごい人でビックリしました」と目を見開く。

これまでの大河ドラマは、世間に名の通った歴史上の人物が多く描かれてきた。しかし、渋沢栄一は実業家としての実績は知られていても、生い立ちやどんな人生を歩んだ人物なのかを広く知られているとはいえない。農家に生まれた栄一は頭の回転が速く、大人や権力にものおじしないやんちゃ坊主だったが、商才に長けた父の背中に学び、商売のおもしろさに目覚めていく。そうした中で、官尊民卑がはびこる幕府の身分制度に怒りを覚え、武士になることを決意して、波乱の人生を突き進んでいくのだ。

「僕の思う栄一は、小さいころから自分の中に信念を持っていて、大人になってもそれを持ち続けていた人。激動の時代に激動の人生を歩むんですが、常に自分で決断して前に進んでいる。その決断の瞬間を、きちんと自信を持って演じようと心掛けています」

吉沢さんの渋沢栄一像は、意外にも‶かわいらしい人〟だそうだ。頑固なところもある一方、自分が間違っていたと気付けばすぐに改めるという柔軟さもある。個人的な利益の追求ではなく、公益の増大を第一に行動し、相手が目上であっても理不尽には果敢に立ち向かっていく。

「本当に裏表がなくて、自分にも周りに対しても感情が素直に出てしまう。僕はこれまでこんなに裏表のない役を演じたことがないので、最初は戸惑いがあったんですが、渋沢栄一という人間のかっこいい部分とかわいらしい部分が伝わるように、しっかり表現していきたいです」

現在、栄一が村一番の力持ちだったというエピソードに基づき、食事量を増やして体を大きくしようとしている最中なのだとか。吉沢さんの風貌がどのように変化していくのかも見どころだ。

吉沢 亮(よしざわ・りょう)

俳優

1994年生まれ。東京都出身。2009年芸能界での活動をスタート。11年「仮面ライダーフォーゼ」で注目を集め、その後数々のドラマや映画、舞台に出演。19年、映画「リバーズ・エッジ」で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞にノミネート。20年には、映画「キングダム」で第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、日本映画テレビプロデューサー協会が主催するエランドール賞新人賞を受賞

吉沢亮公式HPはこちら

写真・後藤さくら

大河ドラマ「青天を衝け」(NHK)

2月14日(日)放送スタート!

毎週日曜日 総合 午後8時/BSプレミアム・BS4K 午後6時

主演:吉沢亮(渋沢栄一役) 作:大森美香 音楽:佐藤直紀 題字:杉本博司

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の公式HPはこちら

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