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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 2021年は“ABCDE”革命元年に

中国・広西壮族自治区に建設された養豚ビル

コロナ感染の出口は見えないが、2021年は新しいビジネスの動きに目を向けよう。この数年、胎動していた技術、産業が一気に花開きそうだからだ。筆者は注目分野を頭文字を取って「ABCDE」と呼んでいる。AはAgriculture(農業)、BはBiotechnology(生命・生物工学)、CはContents(映像・音響・テキスト)、DはDigital Currency(デジタル通貨)、EはElectric Vehicle(自動運転・電気自動車)である。

いずれも既存のものだが、コロナ感染の拡大が技術進化、社会への導入・普及を一気に加速させた点に特徴がある。いわば「コロナ誘発型産業革命」の中核の技術・産業と言える。

「農業」はやや意外かもしれないが、ドローンを生育状況の監視、農薬・肥料の散布に使う動きやロボットによる作物収穫、植物工場はコロナ禍での人手不足で進んだ。中国では、20~30階建てのビル内でアフリカ豚熱などの感染を遮断し、個体の栄養・健康管理も科学的に行うデジタル養豚が急速に拡がっているが、これもコロナ禍が後押しした。

「生命工学」は従来では考えられなかったコロナワクチンのスピード開発や劇的な増産が象徴している。「コンテンツ」の進化は従来はエンターテインメントの分野が先行していたが、コロナ禍で大学のオンライン講義、企業のテレワークや新入社員教育などで、一気に教育・ビジネスの分野が中心となり始めた。スポーツ競技の開催中止はeスポーツの市場拡大にもつながっている。

「デジタル通貨」は中国やスウェーデンが中央銀行発行型で先行、米国もFacebookの提案した‶リブラ〟が内容を一新、名称も‶ディエム〟に変更し動き始めている。「EV」は世界の主要自動車メーカーがラインナップの入れ替えを進める一方、EV専業の米テスラが急成長、後を追うように米国、中国などで新興メーカーや米アップル、中国バイドゥなど異業種参入組が誕生している。

コロナ感染は需要の落ち込みなど世界経済には依然、大きな災厄をもたらしてはいるが、萌芽にすぎなかった技術や産業を一気に開花させるきっかけになっていることに注目すべきだろう。ABCDEの多くを日本、中国、韓国などアジアがけん引し、技術導入による社会の構造転換でも先行しつつあることに注目したい。21年はビジネスでは反転攻勢の年ととらえ、広がるチャンスに目を向けたい。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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