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女性の割合、調査開始以来最高の21・4% 2020年度新規開業実態調査(概要) 日本政策金融公庫 開業資金は少額化傾向 コロナで自粛や休業も

図1 性別

日本政策金融公庫は昨年11月、「2020年度新規開業実態調査」の結果を取りまとめ、公表した。それによると開業者に占める女性の割合は21・4%と1991年度の調査開始以来、最も高くなった。開業時の平均年齢は43・7歳となり、過去最高を更新。13年度以降8年連続で上昇している。新型コロナウイルスの感染拡大により、開業後間もなく休業する事業者も見られる。特集では、本調査の概要を紹介する。

実施要領

(1)調査時点 2020年7月

(2)調査対象 日本政策金融公庫国民生活事業が2019年4月から同年9月にかけて融資した         企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業5176社(不動産賃貸業を除く)

(3)調査方法 調査票の送付・回収ともに郵送、アンケートは無記名

(4)回 収 数 1597社(回収率30・9%)

(5)経営形態 個人企業61・6%、法人企業38・4%(開業時)

1 開業者の属性とキャリア

(1)開業時の平均年齢は上昇が続く

開業時の年齢は「40歳代」の割合が38・1%と最も高く、次いで「30歳代」が30・7%を占めている。開業の主要な担い手は、「40歳代」「30歳代」である。

開業時の平均年齢は43・7歳と1991年度の調査開始以来、最も高くなった。2013年度以降、8年連続で上昇している。

(2)女性の割合は1991年度の調査開始以来最高

開業者に占める女性の割合は21・4%である(図1)。女性の割合は増加傾向にあり、調査開始以来、最も高い割合となっている。最終学歴は、「大学・大学院」の割合が39・1%と最も高く、次いで「高校」が28・0%、「専修・各種学校」が24・3%となっている。90年代に最も多かった「高校」は、長期的に見ると減少傾向にある。一方、「専修・各種学校」は92年度には16・5%であったが、近年は20%台で推移している。

(3)実務経験を有する分野で開業

開業直前の職業は、「正社員・正職員(管理職)」の割合が39・5%と最も高く、次いで「正社員・正職員(管理職以外)」が29・8%を占める。長期的に見ると「正社員・正職員(管理職)」の割合は増加傾向にある。

勤務キャリアは、「勤務経験」がある割合が97・5%、「斯業経験」がある割合が82・0%となっている。経験年数の平均は「勤務経験」が20・3年、「斯業経験」が14・6年であり、多くはビジネス経験をもって開業している。また、「管理職経験」がある割合は67・1%で、経験年数の平均は11・2年である。

2 開業動機と事業の決定理由

(1)最も多い開業動機は「自由に仕事がしたかった」

開業直前の勤務先を離職した理由は、「自らの意思による退職」が87・9%を占める。「勤務先の倒産・廃業」「事業部門の縮小・撤退」「解雇」を合わせた「勤務先都合」による離職は7・4%と減少した。

開業動機は、「自由に仕事がしたかった」(56・5%)、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」(45・8%)、「収入を増やしたかった」(41・9%)の順に多い。

(2)事業の決定理由で最も多いのは「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」

現在の事業に決めた理由は、「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」(41・8%)、「身に付けた資格や知識を生かせるから」(21・9%)、「地域や社会が必要とする事業だから」(13・8%)の順に多い。

開業者の性別では、男性、女性ともに「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」が最も多い。「身に付けた資格や知識を生かせるから」「地域や社会が必要とする事業だから」などは、女性の方が多くなっている。

3 企業の属性

(1)開業業種は「サービス業」が最も多い

開業業種は、「サービス業」(26・4%)、「医療・福祉」(16・7%)、「飲食店・宿泊業」(14・3%)の順に多い。

長期的に見ると「製造業」「卸売業」は減少傾向にある。一方、「不動産業」「教育・学習支援業」は全体に占める割合は低いが増加傾向にある。

(2)開業時の平均従業者数は減少傾向

開業時の平均従業者数は3・2人であった。

調査時点の平均従業者数は3・9人で、開業時からの増加数は0・7人であった。

開業時と調査時点の平均従業者数の内訳を見ると、「常勤役員・正社員」が0・7人から1・0人、「パートタイマー・アルバイト」が1・1人から1・4人へと、それぞれ0・3人、0・4人増えている。

4 開業費用と資金調達

(1)「500万円未満」で開業する割合は1991年度の調査開始以来最高

開業費用の分布を見ると、「500万円未満」の割合が43・7%と最も高く、次いで「500万~1000万円未満」が27・3%を占める(図2)。「500万円未満」の割合は、調査開始以来、最も高くなった。

開業費用の平均値は989万円と調査開始以来、最も少なくなった。

(2)金融機関などからの借り入れと自己資金が主な資金調達先

開業時の資金調達額は平均で1194万円で、調査開始以来、最も少なくなった。

資金の調達先は、「金融機関などからの借り入れ」が平均825万円(平均調達額に占める割合は69・1%)、「自己資金」が平均266万円(同22・2%)であり、両者で全体の91・3%を占める。

(3)事業以外からの収入がある開業者は約4割

主な事業所までの通勤時間(片道)は、「1~15分未満」が31・6%と最も多い。1週間当たりの労働時間は、「35時間未満」が19・4%、「35~50時間未満」が29・6%、「50時間以上」が51・0%となっている。

事業からの収入が経営者本人の定期的な収入に占める割合は、「100%(ほかの収入はない)」が56・3%と最も多い。

事業からの収入が世帯収入に占める割合は、「100%(ほかの収入はない)」が34・9%と最も多い。

(4)売り上げが「増加傾向」の開業者は半数を下回る

現在の月商が「100万円未満」である割合は45・8%で、2019年度と比べて増加している。予想月商達成率は、「100~125%未満」が20・8%、「125%以上」が32・9%で、半数以上(53・7%)の企業が予想を上回る月商を上げている。

現在の売り上げ状況が「増加傾向」である割合は43・0%と2018、19年度と比べて低下し、「減少傾向」が22・7%となった。

現在の採算状況が「黒字基調」である割合は59・8%となった。

(5)「顧客・販路の開拓」や「財務・税務・法務に関する知識の不足」などが課題

開業時に苦労したこととして、「資金繰り、資金調達」(55・0%)、「顧客・販路の開拓」(46・8%)を挙げる企業の割合が高い(図3)。現在苦労していることとしては、「顧客・販路の開拓」(47・3%)に次いで「財務・税務・法務に関する知識の不足」(32・4%)の割合が高くなっている(図4)。

開業時から現在にかけての変化を見ると、「資金繰り、資金調達」の割合が20ポイント以上低下している。一方で、「従業員の確保」「従業員教育、人材育成」といった人材に関する課題を挙げる企業が増加している。

5 現在の満足度と今後の方針

(1)7割以上が開業に満足している

開業の総合的な満足度を見ると、「かなり満足」が28・6%、「やや満足」が44・5%となっており、約7割が開業に満足している。

一方で不満の割合は約10%となっている。

項目別に「かなり満足」と「やや満足」を合計した「満足」の割合を見ると、仕事のやりがい(自分の能力の発揮)が81・2%、働く時間の長さが44・0%、ワークライフバランスは47・6%、事業からの収入が27・2%となっている。

今後の方針については、売上高を「拡大したい」が89・9%、商圏を「拡大したい」が55・1%となっている。

6 新型コロナウイルス感染症の影響

(1)マイナスの影響を受けた開業者は8割

新型コロナウイルス感染症によるマイナスの影響を「受けた」という開業者は、調査時点で80・2%に上る(図5)。

マイナスの影響を「受けた」割合を業種別に見ると、「飲食店・宿泊業」で97・4%と最も高く、「教育・学習支援業」(94・7%)と「運輸業」(92・7%)も9割を超えている。

(2)新型コロナウイルス感染症によるマイナスの影響の内容は売り上げ減少が最多

同感染症によるマイナスの影響の内容は、「売り上げが予定より減った」(82・3%)、「利益が予定より減った」(61・8%)、「営業を一部自粛した」(38・6%)の順に多い。

同感染症の発生を受けて新たに取り入れた仕組みや働き方については、「導入したものはない」との回答割合が47・8%と最も多かった。そのほかでは、「リモート会議」が16・0%、「在宅勤務(テレワーク)」が13・7%、「インターネット上での営業・販売」が11・6%の順となっている。

本調査の概要は、https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_201119_1.pdfを参照。