事例2 食べることは生きること!元気の出るおいしさを提供
炭焼きレストランさわやか(静岡県)
浜松市に本社を置き、静岡県民から絶大な人気がある「炭焼きレストラン さわやか」。休日になると名古屋など県外からも多くの人が「げんこつハンバーグ」を食べに訪れる。味へのこだわりはもちろん、わくわくさせる店づくりで人を呼び、食べることの大切さを伝えている。
地元の人と従業員が集まる「地域一番店」を目指す
オニオンソースをかけて食べるのが通の食べ方。そんなさわやかの看板メニュー「げんこつ・おにぎりハンバーグ」は、牛肉100%の炭焼きハンバーグだ。注文を受けると店員がお客さんの目の前でハンバーグを仕上げてくれる。あふれる肉汁とつくり立ての香ばしい匂いが食欲をそそる。
「『わくわくするふるさとの店』をつくり、人が集まる場所にしたいと思いました」。そう語るのは、さわやかの創業者であり代表取締役の富田重之さん。「シンボルマークは、『爽』という字の中にある4つの『メ』を『人』と変えたものです。お客さま、そして働く人も集まる『地域一番店』を目指しています」。
富田さんが大事にしているのは、心と体が元気で健康であること。大病を患い26歳から10年間闘病生活を送った富田さんは、「食べること」の大切さに気が付いたという。
「闘病生活を終えた後、袋井の青年会議所に所属していました。そこでの活動を通じて、『好き・大切と思うことを目標にする』ことを学んだのです。私は、お客さまの立場に立って、お客さまの代表として、自分が満足する店をつくることにしました」
こうして、富田さんは40歳で創業。現在県内に28店を構えている。その1店舗目としてできたのが菊川本店だ。「あいさつをはじめ地域との交流を大切にしてきました」と振り返る富田さん。今では知名度も高まり、磐田市出身で人気女優の長澤まさみさんのお気に入りとしても有名だ。県外に進出しないのはなぜだろう。
「それは、私たちの実力がまだ伴っていないからです。たくさんある店の中から『価値』を選んで来店するお客さまは、サポーターであると同時に良否を教えてくれる審査員でもあります。お客さまに『さわやかで元気になったよ!』と言っていただき、固定客につなげることができる従業員の育成が重要です。店舗で起きる時代の変化に応えられる人づくり経営に10年を費やしています。まだまだ課題がありますね」
調理の仕上げは、テーブル上で行う。食べる瞬間のおいしさを感じてもらうために、1つのテーブルで複数のお客さんに同時に料理を出すパフォーマンスの高さも必要な技術だ。この「タイミング」が、さわやかの特徴でもある。「店の運営には商品、タイミング、サービスが欠かせません。特にタイミングの部分で他との差別化を図っています。オンリーワンの価値を提供することで人に集まってもらう。それが、さわやかが目標としているものです」と富田さん。「お客さまの変化は、店長に経営者レベルの視点を要求します。お客さまが増える季節や曜日、時間帯を考えたメニューづくりに力を入れ、レベルアップしてほしいですね。私たちはお客さまと一緒に店を運営していることを忘れてはいけません。お客さまが何を求めているのかをくみ取り、それを大事にすることが重要です」。
〝お客さま〟の立場で店づくりにもこだわり
今は来店客のニーズをもとに、36品のグランドメニューに絞って提供しているが、200以上もあった時期があるという。
「あるとき、一通の手紙をもらいました。『小学生のころに大好きだったお店をもう一度つくってほしい』と書いてあったのです。私は初心に帰り、お客さまに元気になってもらいたいという創業当時の気持ちをあらためて確認することができました。お客さまから答えをいただきましたね」
この手紙を機に、お店に来てくれる人が期待し、さわやかが得意とする商品を絞り、げんこつ・おにぎりハンバーグを中心に勝負していくことを決意。メニューを厳選する代わりに、セットの種類を増やした。また、「創業価格フェア」を平成5年にスタート。フェア期間中は通常価格より安い値段で食べることができる。毎月1回実施し、テレビCMでもフェアの周知を図っているという。
さわやかのライスは、富田さん自ら足を運んで選び抜いたおいしいお米が使われている。「食べることは生きること」。食の大切さを多くの人に伝えたいという富田さんのこだわりが感じられる。
安心・安全も徹底管理。メニューに使用している食材・産地をリストにして店内やホームページで公開している。また、平成16年に自社工場を新設し、毎日加工と配送をしている。こうして日々、各店に新鮮でおいしいハンバーグが届けられているのだ。
店舖にもわくわくする工夫を凝らしている。木造仕立てで温もりのある「ふるさとの家」をイメージした店内に、祭りのようなにぎわいを思わせるテント張りのオープンキッチンを設置し、おいしいハンバーグを目で楽しみ、体で楽しむ、そんな空間を生み出している。
創業の精神を共有し次世代につなぐ
「大切なのは利便や効率ではありません。生きる力をつけてもらうことです」と富田さん。「時代に合った質やサービスを考えていくことが必要です。その中で、お客さまに感謝の心を込めた創業時の思いを皆で共有し、具現化させていきたいですね」。創業の精神を一代で終わらせることなく次の世代へ引き継いでいくことが、今後の目標だという。
静岡県は、健康寿命が73・53歳と日本一(厚生労働省が平成22年に発表した数値から県が独自に算出した男女計)。肉は年を重ねると敬遠されがちだが、いきいきと健康を保つために、肉を食べることで良質なたんぱく質が取れることをさわやかは発信している。げんこつハンバーグを食べれば、一日に必要なたんぱく質を男性だと8割、女性だと9割補えるという。
地域の人のために、さわやかはこれからも「生きる力」を提供し続けていく。
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