経済産業省は2月17日、カーボンプライシング導入を議論するため、「第1回世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」をオンラインで開催。日本商工会議所からは、エネルギー・環境専門委員会の井上博貴委員が出席し、意見を陳述した。
同省から、カーボンニュートラル(CN)を巡る動向として、世界で120以上の国家、グローバル企業などがCNを表明する中、企業・産業界・国のそれぞれのレベルで、脱炭素社会に向けた大競争時代に突入し、気候変動対策と整合的なビジネス・国家戦略が国際競争力の前提条件になりつつあるなど説明があった。
井上委員は、成長戦略に資するカーボンプライシングをファクトベースで検討するに当たり、炭素税である地球温暖化対策税をはじめ、既に存在しているカーボンプライシングがどれだけCO2削減に寄与しているのかについて、現行施策の効果検証から始めるよう求めた。
CN実現に向けては、「中小企業の負担が増大するような炭素税や排出量取引といったカーボンプライシングの追加的な導入によることなく、中小企業のチャレンジを促すようなインセンティブ手法により進めてほしい」との考えを示した。足元では新型コロナウイルス感染再拡大の影響でさまざまな業種業態の景況感が悪化していること、さらに企業は、既に高額なエネルギー本体価格に加え、揮発油税、石油石炭税などのエネルギー諸課税、地球温暖化対策税を負担しており、特に震災以降高止まりしている電力料金も経営に大きな影響を及ぼしていることなどから、企業に追加的なコスト負担を強いる制度の導入には反対の姿勢を表明した。
追加的なカーボンプライシングの導入は、特に中小・小規模事業者の経営を圧迫し、エネルギー使用量削減に資する設備更新や技術開発の阻害要因になると危惧している。「企業のイノベーション投資の抑制をもたらす危険性があることを十分に認識し、わが国産業の他国への生産拠点移転(カーボンリーケージ)や国際競争力低下を招く点も十分に踏まえて議論すべき」と強調した。
さらに、「CNを考えるに当たっては、エネルギー政策の基本である『3E+S』をしっかりと踏まえるべき。他方、中小・小規模企業もできるところから環境経営を進めることが欠かせない」と指摘。その上で、「政府の掲げるCNに至る道筋について、多くの中小・小規模企業は自らのビジネス環境への影響や、どのように対応したらよいのか、全く見当がつかない状況である。日本がどのような経済社会を目指し、ビジネス環境がどう変化していくのかを中小企業にも理解しやすいよう、できるだけ具体的な全体像と道筋を示してほしい」と要望した。
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