こうしてヒット商品は生まれた! PASTATAI

九州が誇る高級食材を使用している。ぜいたくで上質な味わいが1人前324円(税込)で堪能できる。賞味期限は1年6カ月

しょうゆとみその製造で1882年に創業した宮島醤油。戦後はソース、食酢、焼き肉のたれ、レトルト食品など、各種調味料や加工食品の製造・販売で事業を拡大してきた。そんな同社が2017年春に発売したパスタソース「PASTATAI(パスタたい)」が、コロナ禍の巣ごもり需要の追い風もあり、急激に売れ行きを伸ばしている。

日本の食材にスポットを当てた新しい味のパスタソース

昨年、パスタやパスタソースの市場規模は大きく拡大した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、外出自粛や外食の営業自粛に伴う巣ごもり需要の急増により、賞味期限が約2年と保存性の高いパスタや、あえるだけで調理が完結するパスタソースに注目が集まっている。ただ、こうしたストック需要だけでなく、パスタが食卓に登場する頻度が増えていることから、売れ行きは引き続き高い水準で推移している。

ことパスタソースに関しては大手食品メーカー製が市場の大半を占める中、売り上げを急拡大させたのが、佐賀県唐津市にある老舗メーカー・宮島醤油の販売する「PASTATAI(パスタたい)」だ。「~たい」は九州北部地方で使われる方言の一つで、「~だよ」という意味である。九州ならではのこだわり素材をふんだんに使っているのが特徴で、「佐賀県産和牛のボロネーゼ」「博多辛子明太子クリーム」「かごしま黒豚ベーコンの豆乳クリーム」の3種類ある。

「パスタは〝イタリアの食べ物〟というイメージが強く、チーズにこだわるなど洋風アレンジがほとんどです。もっと日本の食材を活用したパスタソースがあってもいいのでは? というのが、開発の出発点でした」と同社企画部担当課長の脇山健太郎さんは説明する。

佐賀のおいしい食材を武器に〝地産地工〟を目指す

同社が加工食品に力を入れ始めたのは、30年以上前にさかのぼる。当初主力であったしょうゆやみそといった商品は地域性が強い。そこで2008年に地産地消ならぬ「地産地工」を掲げ、佐賀の優れた食材を活用した商品を開発し、全国展開を目指そうと考えたのだ。地産地工とは、その土地で取れた産物をその土地で加工し、消費者に幅広く提供するという意味だ。

「九州には多くの特産品があり、全国的にも名が知られています。そのどれか一つに特化するのではなく、九州産食材を〝面〟で捉えて活用するという戦略で、商品開発をしていくことにしました」

その第一弾商品が、15年に発売した「贅沢炒飯の素」(現在は販売終了)だ。鹿児島名物・豚の角煮などの具材をふんだんに使ったシリーズだ。その流れで、翌16年にパスタソースの開発に着手する。商品を企画するに当たって、「消費者が味を想像しやすい」ことを第一に、福岡なら明太子、佐賀なら和牛、鹿児島なら黒豚というように、分かりやすさを重視した。しかも、できるだけたっぷりの〝具材感〟を出すことにもこだわった。

「レトルト製品を買ったら、具材が申し訳程度しか入っていなかったとガッカリしてほしくありません。とはいえ、どれも高級食材なので、手ごろな価格で、いかに具材を多く入れられるかが一番苦労しました」

同様に、パッケージが決まるまでにも変遷があった。箱入りだと高級感があり、売り場にも並べやすく、売りやすい。しかし、その分コストが上がり、価格が高くなってしまう。1円でも安く提供するために、レトルトパウチの状態で販売することにした。

「レトルトカレーなら、ものによっては1000円で売ることも可能ですが、パスタソースだとそうはいきません。そもそもパスタ1食分が100円くらいですから、パスタソースを高く売るのは難しい。そのためほとんど具材が入っていなかったり、味付けのみというものもあります。そうした商品と差別化するためにも、具材を可能な限りたくさん入れて、『パッケージの完成品画像と変わらない』というふうにしたかったんです」

1年近い開発期間を経た17年3月、九州域内の量販店を中心に販売を開始した。

我慢して売り続けたことでテレビで放送され追い風に乗る

ところが、意に反して「まったく売れなかった」(脇山さん)。商品開発には量販店のバイヤーの意見なども取り入れながら進め、粘り強く販売し続けてもらったものの、とうとう18年秋には一度、売り場から外されてしまったという。

「その後はギフト市場を狙って、10個セットにしたり、九州のパスタ麺とセットにしたりして、細々と販売を続けていましたが、CMを打つ予算もなく、正直、今後どう売っていこうかと悩んでいました」

転機となったのは、19年秋に放映された「マツコ&有吉 かりそめ天国」という全国ネットのバラエティー番組だ。同番組では、その道のスペシャリストが司会の2人に「おすすめのパスタソースランキング」をプレゼンするコーナーがあり、〝東京では買えないご当地もの〟として同商品が紹介されたのだ。この放送を機に全国的に知名度が上がり、オンラインショップへの注文が殺到した。さらに、昨年はコロナ禍による巣ごもり需要の増大で、パスタソース全体の売れ行きも急増し、同商品も前年比の約4倍を売り上げ、累計販売数50万食を突破した。

「我慢して売り続けたことが奏功しました。ただ、新型コロナによる売上増は一時的な要素が大きいですし、このまま続くとは思っていません。今後も、手軽、簡単、便利を求めるニーズは逆行しないと思うので、引き続き新たな市場を開拓して九州ブランドを広げていきたい」と脇山さんは地元愛を込めた課題を語った。

会社データ

社名:宮島醤油株式会社(みやじましょうゆ)

所在地:佐賀県唐津市船宮町2318

電話:0955-73-2151

HP:https://www.miyajima-soy.co.jp/

代表者:宮島清一 代表取締役社長

設立:1950年

従業員:733人

※月刊石垣2021年5月号に掲載された記事です。

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