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こうしてヒット商品は生まれた! グリーンソフト

抹茶の入った緑色のグリーンソフト。無添加、無着色で抹茶本来の風味を生かし、あっさり、さっぱりした後味で人気を得ている。ソフトタイプとハードタイプともに180円(税込)

1854(安政元)年にお茶の製造販売で創業し、現在は卸売業や飲食業なども広く展開している玉林園。同社が1958年に販売を開始して以来、和歌山市民に愛され続けているのが「グリーンソフト」だ。まだソフトクリーム自体が珍しかった時代に、抹茶を混ぜて販売した同商品はすっかり地域に定着し、年間200万個を売り上げるソウルフードとなっている。

緑茶の夏場の売り上げ減対策で誕生した抹茶入りソフトクリーム

他県の人にはほとんど認知されていないけれど、地域の人からは絶大な支持を得ている、そんなご当地グルメは少なくない。和歌山市に創業して160年以上の歴史を持つ玉林園が販売する「グリーンソフト」もその一つだ。抹茶を配合したソフトクリームで、滑らかな口どけとさっぱりした後味が、地域の老若男女にこよなく愛され続けている。

それにしても、同商品が販売を開始した1958年当時は、ソフトクリーム自体が珍しかった時代だ。お茶の老舗である同社が、アイスをつくろうと思い立った理由は何だったのか。

「夏場は麦茶ばかり売れて、茶葉がまったく売れずに苦労しまして。その打開策として、先代が開発したのがグリーンソフトです」と同社六代目社長の林和宏さんは発端を説明する。

先代の林己三彦(きみひこ)さんは、新しいものをつくるのが大好きな人だったそうで、あるとき「海外では抹茶にミルクを入れて飲んでいる」という話を耳にし、それをヒントに抹茶を入れたソフトクリームの商品化を思い付いたという。

「開発当時からこだわったのは、抹茶を石臼でひくことです。一般的な製法では粉砕機を使うケースが多いのですが、石臼でひくと、より粒子が細かくなり、食べたときの舌触りがまったく違います。ですから、うちは今でも専門業者に依頼して、石臼でひいた抹茶を使っているんですよ」

こうして完成したグリーンソフトはすぐに受け入れられ、評判を呼ぶ。しかし、同社の店舗でしか食べられないため、知る人ぞ知る味として定着していった。

子どもを味方につけて地域のソウルフードに

同商品が市民に広く知られるようになったのは、ある企画がきっかけだ。こどもの日のイベントで、市内の幼稚園や保育園に通う子ども全員に、グリーンソフトの無料引換券を配布したのだ。

「当時で1万枚くらい配ったんですが、反響は予想以上でした。引き換え期間中は、連日多くの子どもたちが店にやって来て、グリーンソフトを食べていました。その間に、お母さんはお茶の買い物をするという流れが生まれました」

子どもを対象としたこのプレゼント企画は毎年続いており、今年で54回を数える。そのため和歌山の子どもたちは、ソフトクリームは緑色をしていて、抹茶の味がするものだと思って育ち、いつしかソウルフードとなっていった。

同商品の販路が市外へと広がったのは、発売から30年ほどたってからだ。当初から使用していたソフトクリームマシンは、まだ自動洗浄機能が搭載されていなかったため、毎日タンクを水洗いしなければならなかった。中に残ったソフトクリームをただ捨ててしまうのはもったいないと、ウエハース製のコーンに絞り出してふたをし、アイスボックスに入れて保存しておくようになった。

「それを見たお客さまが10個くらいまとめて買って行くようになりました。ただ、もともとタンクに残ったものを保管していただけなので、常にあるわけではありません。すると、お客さまがたまってくるのを待つようになったんです」

そこで専用のパッケージをつくって正式に商品化した。商品名は同じだが、出来たてが楽しめる方をソフトタイプ、袋詰めしたものをハードタイプと呼んで分類している。滑らかな口どけはソフトタイプに軍配は上がるが、ハードタイプは同社店舗のほかスーパーでも広く扱われ、保存もきくのでまとめ買いをする人が多く、売り上げが伸びていった。

アフターコロナを見越して新商品展開を画策中

発売から60年以上の月日がたち、今や親子3代にわたって親しまれている同商品。県外から帰省すると、真っ先に食べに来る人も少なくないそうだ。近年では、テレビや新聞などに取り上げられる機会が増えたこともあり、他県の人がオンラインショップでハードタイプを購入するケースも増えている。

「SNSでも結構取り上げられています。いい宣伝になる一方で、『今日のグリーンソフトは形が悪い』などと書き込まれてしまったことがありました。まだつくるのに不慣れな従業員が巻いたのかもしれません。貴重な意見だと受け止め、今では独自の『巻き方検定』を導入して、従業員全員に受けさせています」

こうした見えない企業努力や味の改良を重ね、現在ではソフトとハードの両方を合わせて年間200万個を売り上げる。昨年のコロナ禍では、在宅時間が増えたためか、前年比で1割以上売り上げが増えたそうだ。

人々の消費行動に大きな変化が起こっている今、同社は新商品の開発に着手している。

「エスプーマってご存知ですか? 食材に気体を含ませて泡状にする機械なんですが、それを扱っているガス会社と連携して、ご当地食材を使った新商品を開発し、全国展開したいと考えています。今のうちに概略を固めて、コロナが終息したらすぐに行動に移せるように準備しているところです」

ピンチをチャンスと捉える同社のDNAは、しっかり受け継がれているようだ。

会社データ

社名:株式会社玉林園(ぎょくりんえん)

所在地:和歌山県和歌山市出島48-1

電話:073-473-0456

HP:http://gyokurin-en.co.jp/

代表者:林 和宏 代表取締役

設立:1956年

従業員:130人(パート含む)

※月刊石垣2021年6月号に掲載された記事です。

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