コラム石垣 2021年6月11日号 中村恒夫

1カ月平均の超過勤務80時間とされる「過労死ライン」。これをさらに引き下げるべきだとの声が、長時間労働で家族を亡くした遺族らから上がっている。労働時間短縮は世界的な潮流であり、いずれその方向に進むと思う。

▼議論の過程で問題になるのは労働時間の把握が企業任せになっている点。始業・就業時刻はタイムカードを使用する職場なら容易だが、外回りの営業職は難しい。監督当局は携帯端末のログイン時刻の記録を求め、そのために勤怠管理システムを更新した企業もある。ただ、外勤職も、コロナ禍で在宅ワークをしている従業員も、記録通りに働いているとは限らない。職場にいる人間であれば、所属長が退社を促すことができる一方で、本人にとってどうしても終えなければいけない仕事を、ログアウトした後で続けているケースは少なくないだろう。

▼副業を持った場合、雇用契約を結んでいれば、後から契約した企業が超勤時間の割増賃金を支払う義務を負う。だが、出来高払いのような副業であれば、トータルの労働時間の把握は結局本人任せになってしまう。個人で事業を行う人にも同じことがいえる。

▼デジタル社会の進行に合わせて、高校では「情報」科目が必修になる運びだ。金融業界は学校に出向き、投資教育の出前授業を行っている。健康教育はどうか。「薬物乱用防止」「受動喫煙対策」「がん教育」など教育現場では対策が講じられている。しかしながら「働き過ぎの問題点」は社会に出てからのことと半ば放置されているのではないか。働き方の多様化が進む中で「自分の健康に注意を払うこと」がいかに重要であるかを、若いときから心に刻み込めるような教育を期待したい。 (時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)

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