世界的人気のジャパニーズウイスキー。2000年代前半までは生産量が大きく減少していましたが、ハイボールブームで回復基調に変わりました。
さらに、14年にニッカウヰスキー創業者をモデルとしたNHK連続テレビ小説「マッサン」が放映されると、高品質なジャパニーズウイスキー人気が沸騰。出荷量は大幅に増えました。今では世界5大ウイスキーに数えられる存在にまでなっています。
人気とともに国内で82社が洋酒製造の免許を持つ時代になり、埼玉県秩父市の「イチローズモルト」のように全国で蒸留所が立ち上がりました。大変喜ばしいことなのですが、品質に違いがあり、消費者に混乱を引き起こす問題も生じてきたようです。
ジャパニーズウイスキーに対する定義は酒税法になく、これまで海外で製造された輸入ウイスキーの原酒を国内で瓶詰めした製品も、同じ分類で流通していました。これでは、消費者は何を選んだらいいのか迷います。そこで、〝日本国内で採取された水を使用するほか、国内での蒸留、原酒を700リットル以下の木樽に詰め、国内で3年以上貯蔵、瓶詰めしたものがジャパニーズウイスキーである〟と日本洋酒酒造組合が定義しました。
この定義がしっかりと広まることで、消費者は安心して選ぶことができます。同じように、複数の製品を一つの定義で商品化する(=ブランド構築で消費者の信頼性を高め、市場拡大を狙える)商品はたくさんあります。ちなみにマーケティングの世界でブランドを構築するということは、差別化を明確化することといわれてきました。ジャパニーズウイスキーであれば、日本産の原料で醸造することを差別化の基準としました。
一方で、日本全国に、ブランドの差別化基準をもっと詳細まで定義している地域ブランドがたくさんあります。例えば「関さば」であれば、大分県の別府湾に面した佐賀関(さがのせき)でとれたことに加えて、一本釣りされたこと、重さを図らない(暴れて身が割れないため)、活〆(いけじめ)するなど細かく基準が定義されています。
つまり、同じ地域でとれたサバでも、関さばとは限らないのです。ただ、基準を厳しくすれば収量(サバであれば漁獲量)が減ります。ビジネスとして、質と量を増やしていくために地域ブランドを構築するわけですから、基準をいかに細かくしていくか、バランスを考えて定義することが重要といえます。
全国には地域ブランド候補となる素材がたくさんありますが、基準を考えるときに、こうした視点を加味して、検討を加えてください。
(立教大学大学院 非常勤講師・高城幸司)
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