環境を意識したオリジナル商品の製造・販売を行っているランドポート。同社が2019年に発売したソーラー充電式ランタン「キャリー・ザ・サン」が、国内外のさまざまな地域や生活シーンで活用され、ファンを増やしている。形、仕組み、用途など、従来のランタンのイメージを覆す同商品は、今後ユーザーによって、さらに進化する可能性を秘めている。
大震災をきっかけに〝灯り〟の重要性に気付く
ランタンの使い道というと、真っ先に思い浮かぶのはアウトドアだろう。近年、アウトドア人気の高まりを受けて、ランタンも進化を遂げている。
しかし、用途はそれだけではない。ランドポートが販売するソーラーランタン「キャリー・ザ・サン」は、もともと災害時に役立つグッズとして企画された商品だ。
「きっかけは阪神・淡路大震災です。日本ではほとんどの地域に電気が通り、灯(あか)りがつくのは当たり前と思って生活していますが、大きな災害が起きると夜は真っ暗になってしまいます。暗闇は不便なだけでなく、心を不安にさせ、危険も伴います。改めて灯りの大切さに気付いたことがヒントになりました」と同社副社長の川添裕史さんは振り返る。
同社は1990年にパソコンの周辺機器やソフト、ガジェット類の製造・販売会社として設立。本業で多忙な日々を送る一方、「地球環境を考えたものづくりをしたい」と、電池不要のライトやソーラー充電式の製品をいくつも企画し、発売した。そして、東日本大震災の起きた翌年に、今までのエコなものづくりをさらに発展させ、〝人の心をほっとさせる温かい灯り〟の開発に着手した。
防災用品の枠を超えた需要に新たな活路を見いだす
「災害時に使うことを想定し、電気がなくても太陽光で〝いつでも〟充電でき、持ち運びしやすく〝どこでも〟使え、避難所に集まる〝誰にでも〟使えるソーラーランタンを目指してつくりました」
防水試験や落下実験、開閉テストなど製品の強度に気を遣い、避難所で〝ほっとできる〟明るさはどのくらいか、ベルトの色は何色がいいかなど、ソフトやデザイン面でも細部にこだわり、細かな改良を重ねていった。こうして生まれたのが「キャリー・ザ・サン」だ。
ところが、発売してみると思わぬ反応があったという。「発売当初は、主にアウトドア用品や防災用品として販売していましたが、ユーザーの声を丁寧に聞くうちに自分たちでは想定していなかった思いもよらない使い方がいろいろあるのだと気付きました。例えばキャンプや山登りの時に利用するほか、夜の散歩や常夜灯として毎日使う。野外イベントの照明として利用する。夜中の授乳時用の灯りとして使う。災害用だけでなく、普段の生活で老若男女問わずさまざまなシーンで使うことのできるキャリー・ザ・サンに大きな可能性を感じました」
同社はこのころ、PC周辺機器の製造・販売やソフトウエアの開発など創業時代から行ってきた事業から全て撤退し、ソーラーランタンの製造・販売に事業を一本化する。「一商品」として製造・販売するだけで終わらせたくないという思いが強くなり、ソーラーランタンの事業に集中する決断をしたからだ。
企業姿勢が商品の付加価値を高めブランド価値を上げる
川添さんは「キャリー・ザ・サン」の価値を信じ、防災用品やアウトドア用品としてだけでなく、インテリア用品として魅力のあるライトとして売り込んだり、企業の記念品、他業種とのコラボレーション、イベントでの活用などあらゆる可能性を取り入れたりして、さまざまな用途の提案をしていった。既成概念にとらわれず、提案する業種やジャンルは限定しなかったが、販売店やパートナー選びは慎重に行った。価格や知名度だけで取り扱うのではなく、商品の本質を理解して魅力を発信してくれるパートナーを前提に販路開拓を心掛けた。その結果、リゾートホテルやカフェ、ブックストア、美術館、カー用店など、一見するとソーラーランタンとは直接関係のないような販路もどんどん拡大していき、売れ行きは飛躍的に伸びていった。
売り上げを伸ばしていくのと並行して積極的に取り組んできたのが、企業価値およびブランド価値の向上を目的とした活動である。昨年10月には「Buy One Give One®」という社会貢献活動のプログラムをHP上で公開した。これは、同社の公式オンラインストアで同商品を購入すると、同じ数の商品が被災地や海外の無電化地域などへ寄付されるという取り組みだ。
「この活動は17年からスタートしていたんですが、HPに公開してから反響の大きさに驚いています。個人の方からはもちろんですが、ノベルティ用に数百個単位で購入された企業もすでに数社あります。取り組みに賛同して参加を表明してくださった企業もあり、今後さらに増えていきそうです。今年の夏には海外紛争地の難民キャンプへ寄付することが決まっています。現地へ届けた後は、購入してくださった方々へ報告レポートをお送りする予定です」
同商品は単なる売り物と言うだけでなく、企業の考えや姿勢を伝えるツールという役割も担い、それが商品の付加価値となってブランド力が向上するという好循環を生み出している。
「商品に興味を持って買ってもらうことが重要だと思います。商品のストーリーを通じて、当社のことも広く知ってもらいたいですね」と語る川添さん。今後、同社がどんな商品を生み出し、進化していくのか目が離せない。
会社データ
社名:ランドポート株式会社
所在地:東京都千代田区外神田2-2-19
電話:03-3255-8388
HP:https://www.landport.co.jp/
代表者:傳馬 綾 代表取締役
設立:1990年
従業員:9人
【東京商工会議所】
※月刊石垣2021年7月号に掲載された記事です。
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