若手経営者が描く10年後の東北ビジョン vol.4 「日本の縮図」飛島を元気に 高齢化した島で起業、若者移住へ

東日本大震災からの復興の担い手となる東北各地の若手経営者の取り組みと思い描く10年後のビジョンを12回連載で紹介する

「島には何もないけど、心を豊かにするものが全部ある」と語る本間さん

東日本大震災を機に、改めてふるさとのことを考えた人は多いだろう。山形県唯一の離島、日本海に浮かぶ飛島出身の本間当さんは、震災を機に帰郷し、合同会社とびしまを設立。高齢化した島に雇用を生み出そうと、仲間とともに奮闘している。「島の未来はわが社の未来」と、島の文化や自然を守りながら若者の移住を促進する本間さんに、同社の現在と今後を伺った。

高齢化した島で「なんでも屋」 若者の移住増やす取り組み

山形・酒田港から定期船で75分の飛島。周囲約10㎞の自然豊かな島で、春から秋はバードウオッチング、釣り、海水浴などが楽しめる。住民は約100世帯に175人。平均年齢80歳、高齢化率80%で、高齢化や人口減少において「日本の縮図」といわれる。

この島で2013年に設立されたのが合同会社とびしま。社員数8人、平均年齢30歳。理念は「しまびとが社員の会社」。事業の基盤は、島の風景や文化を保存・継承する活動「0次産業」(図参照)。

「今まで培われてきた飛島という土地の上にわれわれがいる感覚を大切に、海のごみ拾いをしたり、飛島の文化やお年寄りを敬ったり。SDGs=持続可能な開発とは、われわれにとって普段の活動の延長です」と代表の本間当さん。

同社は島に雇用を創出するための、カフェや旅館、シェアハウスの運営、観光ガイド、生活に密着したものでは水道施設管理、除草、除雪、酒田市の広報誌配布などのほか、ボランティアで高齢者の家の電球交換など、さまざまな取り組みを行っている。また、本土の酒田市内で飛島のアンテナショップ兼居酒屋も運営し、島を盛り上げている。

このうち、旅館は経営者が高齢となり、後継者がいなかったので同社が継いだ。シェアハウスは、数年前まで建設会社の宿舎だった建物で、本間さんたちが19年にクラウドファンディングにより資金400万円を集めてオープンした。利用は会員制で、会員は全国に約200人いるという。

「飛島の関係人口を増やして、移住者を増やしたい」という本間さん。関係人口とは、地域と多様に関わる人々を指す。同社の活動を通じて、着実に飛島の関係人口が増えている。

震災を機に帰郷し島で起業した理由

飛島で生まれ育ち「島から出ることが目標だった」と本間さん。中学卒業後に島を出て、進学。30歳まで宮城県仙台市でペット関連の仕事をしていたが、東日本大震災で職場が被災。仕事を再開できるのか、先が見えなかった。

そこで、休暇のつもりで飛島へ帰郷。実家の旅館をしばらく手伝おうと思った。しかし、島は自分がいたころとあまりに違っていた。

「高齢者ばかりで、子どもの声が聞こえなかった。母校の小中学校は児童がおらず休校になり、駄菓子屋もなくなって……」

当時の島民は、飛島はこのまま高齢化してやがて消滅する、と考えていた。その雰囲気を感じた本間さんは、仙台に戻らず、飛島で暮らすと決意。13年に起業した。

島外出身の仲間も会社に加わり、最初の2年間は東京などに出向いて飛島をPR。経営的には厳しかったが、必死だった。その後、同社の活動が地域おこしとしてメディアで取り上げられ、飛島の知名度が上がっていった。

「以前は、再び島を盛り上げようとするわれわれをうるさく思う人もいましたが、自分たちは突き進んだ。島民が徐々に変わってきました」

現在は「とびしまという会社があるから、今の飛島がある」と言う人もいる。「とてもうれしい」と本間さんは笑顔で語った。

厳しいコロナ禍でも希望の光 新たな技術に未来へ期待

観光がメインの収入源である島にとって、昨年から続く新型コロナウイルスの影響は大きい。観光客は例年の半分ほどで、同社の昨年の売り上げは3~4割減。観光ガイドやツアー、移住や定住のための体験会なども計画していたが実施できず、オンラインイベントに変更した。「コロナで事業の方向転換を強いられた」という。

一方、島に移住することに対して若者の関心が高まっている。「コロナ禍を機にリモートワークが盛んになっているので、そういう人たちが飛島を移住先として選んでくれれば」と期待している。

昨年からは高等専門学校や地元企業と協力して「テックアイランド」プロジェクトを始めた。海岸に漂着したごみを自動回収するロボットの開発や、小型無人機ドローンで釣り人に食事を運ぶなど、ハイテクを駆使して離島特有の課題の解決を目指す。

「島だからこそできる実証実験をして、数年後には実用化させたい」と本間さんたちは新たな取り組みにワクワクしている。

会社データ

社名:合同会社とびしま

所在地:山形県酒田市飛島字勝浦乙132-19

電話:0234-96-3800

HP:https://www.tobi-shima.com/

代表者:本間 当

従業員:8人

【酒田商工会議所】

※月刊石垣2021年8月号に掲載された記事です。

わがまちの10年後展望

わがまちの10年後=わが社の10年後 社員100人で島のコミュニティを維持

10年後には、島内でも島外でも、飛島に関係ある仕事をする社員が100人いることが目標です。島民が高齢化しても社員が100人いれば、飛島のコミュニティを維持できると考えています。

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