自社製品の認知度を上げて、売り上げにつなげる戦略として、記念日との連携があります。「○○の日に△△を贈る」あるいは「買って祝う」などのトレンドを仕掛け、注目度を上げる手法。代表例として、母の日(5月)とチョコレートブランド「ガーナ」の連携はご存知ですか?
母の日が近くなると店頭に赤いデザインのディスプレーとともに商品が陳列され、飛ぶように売れる現象が起きています。同時期に人気女優やキャラクターが登場して、母の日に「赤いガーナを送りましょう」というCMが流れているので、見た人は多いかもしれません。でも、こうしたトレンドが出来上がってから20年しかたっていません。
ちなみに母の日に感謝の印で贈ることが習慣となっているのは赤いカーネーションですね。始まりは、20世紀初頭の米国で衛生改善活動を行い「母親の鑑(かがみ)」のような存在であったアン・ジャービスの娘・アンナが亡き母をしのんで白いカーネーションを祭壇に飾ったこと。それから亡き母をしのぶときには白、健在な母に感謝を示すときには赤のカーネーションを贈るスタイルで広まっていきました。
そんな記念日の贈り物に対して2000年頃に食品メーカーが「花より団子」ではないですが、赤いパッケージのガーナチョコも添えたら、もっと喜んでいただけるはずと考えて、店頭でチョコとカーネーションを組み合わせた販売展示を社内で提案。この提案が承認されて母の日とガーナの連携が始まりました。
ただし、販売展示はお試し企画としての承認でしたので限られた店舗・少ない予算での取り組みとなりました。それでも、成果が出なければ母の日の企画は翌年実施できなくなります。この企画を消費者に知ってもらうため、知恵を絞ってマーケティングが行われました。
そうした背景から行われた施策の一つが展示コンテストの開催。目立つ、ユニークなディスプレーをしてくれた店舗を表彰、ホームページで紹介することで、店舗間の競争が生じて目立つ展示をしてもらえることになりました。
すると、消費者の心を大いにつかんだようです。カーネーションと一緒にガーナチョコは飛ぶように売れ、翌年から全国的な仕掛けが行われ、現在ではチョコレート業界の大いなる稼ぎ頭のバレンタインデーに負けない売り上げを稼ぐ企画になりました。
日本には無数の記念日があります。知恵を絞り、連携する企画を考えれば、新たな売り上げを創造できる可能性は十分になります。ガーナのような成功例が幾つも生まれることを願っています。
(立教大学大学院 非常勤講師・高城幸司)
最新号を紙面で読める!