日商・東商 中小への影響配慮を 地球温暖化対策計画案 環境省に意見書提出 「地球温暖化対策計画(案)」に対する意見(抜粋) 2021年10月1日 日本商工会議所 東京商工会議所

日本・東京商工会議所は1日、9月3日に政府が公表した「地球温暖化対策計画(案)」に係るパブリックコメント募集に対し、意見を取りまとめ、10月1日、環境省に提出した。意見書では、「コスト増のしわ寄せを中小企業のみが被ることのないよう、地域の産業や中小企業への影響などに配慮した公平な負担の在り方について早急に検討すべき」と主張。エネルギー政策については、環境面だけでなく、安価で安定したグリーン電力の供給など、経済性を考慮したバランスの取れた政策が必要との考えを強調している。

個別の項目では、「研究開発の強化と優れた脱炭素技術の普及」「中小企業の排出削減対策の推進」「電力分野の脱炭素化」「再エネの導入拡大・長期安定発電に向けた事業環境整備」「J-クレジット制度の活性化」などを要望。地球温暖化対策の技術開発と社会実装に向けては、意欲ある企業などに適切に支援が届き、民間の取り組みを力強く促すインセンティブとなるよう、大規模かつ積極的な財政支援を継続的に実施することなどを求めている。

1 基本的考え方

気候変動から気候危機へと事態は深刻化する中、世界はすでに、地球温暖化への対応を経済成長の制約やコストとして捉える時代から、「成長の機会」と位置付ける時代に突入している。わが国としても新時代に向けた大きな成長につなげる「経済と環境の好循環」を目指し、日本企業の技術や製品、サービスの価値と産業競争力を高める産業政策としての視点が決定的に重要であり、喫緊の課題である地球温暖化対策について、国主導の下、官民一体となって取り組まなければならない。

併せて、目標達成を確実にするためには、それぞれの施策について、誰が主体となって取り組み、また、どれほどのコストが発生し誰が負担するのか、といった点を明確にすべきである。現在、見直しが進められている「地球温暖化対策計画(案)」(以下、「本計画」)では、2030年に向けて産業部門や業務部門に対し、大幅な省エネを行うことが求められている。

中小企業においても、それぞれの事業内容に照らしながら、省エネなどに積極的かつ主体的に取り組むことが重要である。脱炭素に向けた世界の動きの中で産業構造は大きく変化し、企業においては従来のビジネスモデルや経営戦略の見直しが必要となるが、同時に、グリーン関連を中心に新たな市場と、大きなビジネスチャンスが生まれることも期待される。

省エネ関連で優れた技術や製品、サービスを有する日本企業が世界市場をけん引できるよう、国内産業の育成や新たな市場における国際的なルールづくりへの積極的関与など、政府はあらゆる政策を総動員し、日本の産業競争力を一層強化するための大規模な支援を実施すべきである。なお、省エネ関連の新技術の開発に係る知的財産権の不当な吸い上げ・技術流出などが生じないよう中小企業の知的財産権の保護にも留意すべきである。

すでに、サプライチェーン全体に対する脱炭素化の要請が高まり、中小企業に対してサプライチェーンを通じたCO2排出削減を求める動きがある。コスト増のしわ寄せを中小企業のみが被ることのないよう、地域の産業や中小企業への影響などに配慮した公平な負担の在り方についても早急に検討すべきである。

エネルギーユーザー、特に中小企業にとっては、環境面だけでなく安価で安定したグリーン電力の供給など、経済性を考慮したバランスの取れたエネルギー政策が強く求められる。当所が本年8月に全国の商工会議所会員事業所に対し実施した調査では、85%超の中小企業が「電力料金の上昇は経営に悪影響/懸念がある」と回答しており、震災以降高止まりする電力料金が経営に大きな影響を及ぼしている状況がうかがえる。加えて、コロナ禍の長期化の影響により、事業の建て直しを最優先せざるを得ない中小企業も多い現状に鑑みれば、地球温暖化対策に係るコスト負担の増大は、中小企業にとって事業継続に直結する問題であり、ひいては地域経済そのものの衰退も懸念される。

今後、本計画を実行に移していくに当たっては、こうした地域の中小企業の厳しい現状を十分に勘案いただき、エネルギーコストのさらなる上昇が中小企業の経営を圧迫し、産業競争力の低下につながることがないよう、産業の現場の実態に照らし、不断の見直しを図りながら進めていただきたい。

2 個別事項に対する具体的意見

中小企業の排出削減対策の推進

中小企業の自主的取り組みへの具体的な支援として、省エネルギー意識向上に向けた広報活動や設備投資などへの補助に加え、税制・資金調達上の優遇措置や業種・業態・規模別の相談窓口の設置、また、企業向けの各種支援策について特に中小企業が分かりやすく判別・活用できるような情報の「見える化」および手続きの簡素化について強力に推進いただきたく、その旨を明記いただきたい。

研究開発の強化と優れた脱炭素技術の普及など

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、非連続的なイノベーションを創出していかなければならず、政府が国家プロジェクトとして取り組むという覚悟を持ち、国主導の下で、官民一体となり革新的イノベーションにチャレンジする旨を明記いただきたい。

電力分野の脱炭素化(原子力発電)

2050年カーボンニュートラルの実現を確かなものとするため、原子力発電については、透明性の高いコスト検証を行い、安全性を最優先させた上での早期再稼働に加え、設備利用率の向上、さらにはリプレース・新増設を含め、原発政策を推進する旨を明記いただきたい。

電力分野の脱炭素化(火力発電)

火力発電から排出されるCO2を回収するCCUSやカーボンリサイクルの仕組みの構築、水素・アンモニアの活用による火力燃料自体の脱炭素化などについて、官民を挙げたイノベーションが必要であり、CCSの適地の確保および水素・アンモニアの供給体制の構築などにおいて政府がリーダーシップを取って推進する旨を明記いただきたい。

再エネの導入拡大・長期安定発電に向けた事業環境整備など

再生可能エネルギーを最大限導入し、長期安定的な利用を実現するための事業環境整備などについて、優れた技術や製品、サービスを有する日本が世界市場をけん引できるよう、国内産業の育成や、新たな市場における国際的なルールづくりへの積極的関与などに対して、あらゆる政策を総動員し、政府が大規模に支援する旨を明記いただきたい。

J-クレジット制度の活性化

J-クレジット制度の活性化は、「成長に資するカーボンプライシング」のために有効であり、より簡便な参画手続きの検討などにより中小企業が活用しやすくなる取り組みの推進、並びに「制度の周知活動強化などの制度環境整備の検討」について、特に中小企業に十分に認知されるよう取り組みを推進することを明記いただきたい。

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度について、電子化の推進など、より活用されやすい制度づくりのための見直しについてはぜひ推進いただきたい。一方で、任意報告事項について報告しないことが、マイナス評価や不利益な取り扱いにつながるような制度設計は避けるべきであり、その旨を明記いただきたい。

成長に資するカーボンプライシング

成長に資するカーボンプライシングの検討に当たっては、日本経済の足腰を支える地域経済や中小企業の現状を十分に踏まえた上で検討を進める旨を明記いただきたい。また、今後の取り組みについてロードマップを明示し、想定される道筋や時間軸を示すことで、カーボンプライシングを含むカーボンニュートラルへの取り組みが進む中で自社のビジネス環境や地域経済がどのように変化するのか、中小企業の理解促進を図る旨を明記いただきたい。

地球温暖化対策技術開発と社会実装(略)